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移転価格事務運営指針を改正
(総原価+5%の「簡易な算定方法」を追加)(日本の税務)

【移転価格】国税庁 企業グループ内役務提供取引に係る
移転価格事務運営指針を改正
(総原価+5%の「簡易な算定方法」を追加)(日本の税務)

国税庁は、平成30年(2018年)2月16日付で、「移転価格事務運営要領」(事務運営指針)を一部改正しました。目的は、多国籍企業グループ内における役務提供取引の取扱いの整備と、事前確認手続の明確化です。

 

多国籍企業グループ内における役務提供取引とは

多国籍企業グループ内の役務提供は、親会社等が海外子会社等の国外関連者に対して行う、予算管理や会計・税務に関する事項、情報通信システムの運用・保守管理、人事関連業務などの支援活動のうち、国外関連者にとって経済的又は商業的価値を有するものです。移転価格税制上、これらの支援活動に関しては、対価を請求する必要があります。

 

移転価格事務運営要領(事務運営指針)とは

移転価格事務運営要領(事務運営指針)は、上位官庁である国税庁から、下位官庁である国税局および税務署に対して発する、移転価格税制に係る内部事務を行うに当たって守るべき規則です。法律ではなく内部規則ですので、納税者である企業を直接拘束するものではありません。しかし、国税局・税務署に所属する税務調査官は、この規則に従って税務調査を行いますので、納税者側も熟知し、税務調査に備えたいものです。

 

特に、多国籍企業グループ内の役務提供は、税務調査において、その適正額について納税者と税務調査官との間で見解の相違が起きやすい分野ですので、今回の改正内容の把握が望まれます。

 

移転価格事務運営指針の改正点

1.多国籍企業グループ内における役務提供取引の取扱い

(1)多国籍企業グループ内役務提供取引に対する簡易な算定方法の追加

 国税庁は、今回の移転価格事務運営指針の改正において、一定の多国籍企業グループ内役務提供につき、役務提供に係る総原価にその5%を上乗せした金額を独立企業間価格として取扱う「簡易な算定方法」を追加しました。

 ● 追加された独立企業間価格の「簡易な算定方法」とは?

今回、追加された、「簡易な算定方法」とは、一定の多国籍企業グループ内役務提供取引について、企業が役務提供に要した総原価に、その5%を上乗せした金額を企業と国外関連者間の独立企業間価格とする方法です。

 この総原価+5%の「簡易な算定方法」は、以下の要件を満たす場合に適用が可能です。

 ● 「簡易な算定方法」の適用要件

イ 役務提供が支援的な性質のものであり、企業と国外関連者が属する企業グループの中核的事業活動に直接関連しないこと

ロ 役務提供において、企業または国外関連者が保有し、又は他の者から使用許諾を受けた無形資産を使用していないこと

ハ 役務提供において、当該役務提供を行う企業又は国外関連者が、重要なリスクの引き受け、もしくは、管理又は創出を行っていないこと

ニ 役務提供の内容が以下の業務のいずれにも該当しないこと

   ・研究開発

   ・製造、販売、原材料の購入、物流またはマーケティング

   ・金融、保険又は再保険

   ・天然資源の採掘、探査または加工

ホ 役務提供と同種の内容の役務提供が非関連者との間で行われていないこと

へ イからホまでに掲げる要件のすべてを満たした企業グループ内の役務提供について、その内容に応じて区分をし、その区分ごとに役務提供に係る総原価の額を従事者の従事割合、資産の使用割合、その他の合理的な方法により当該役務提供を受けたものに配分した金額に、その金額に5%を上乗せした金額をもって役務提供の対価の額としていること。

ト 役務提供の内容を記載した書類等を作成、または、取得し、保存していること

 

なお、「へ」の役務提供に係る総原価の額には、原則として、役務提供に関連する直接費のみならず、合理的な配賦基準によって計算された担当部門と補助部門における一般管理費等の間接費も含まれます。

 

 ● 「簡易な算定方法」の利用

今回の改正において、税務調査官は、上記のイからトまでの要件を満たす役務提供について、比較対象取引を選定するのが困難な場合には、比較対象取引を選定して独立企業間価格を算定する原則的な方法に代えて、新しく導入した「簡易な算定方法」を利用することができるものとされています。

 

この「簡易な算定方法」を利用する場合に適用されるマークアップ率は、5%と定められています。なお、OECD/G20のBEPSプロジェクトにおける議論において、マークアップ率をレンジ(範囲)ではなく5%とすることで合意されたことから、5%がマークアップ率として採用されています。

 

また、当該、「簡易な算定方法」で独立企業間価格を算定する場合を除き、税務調査官は、当該企業または国外関連者の本来の業務に付随して行われたものについて調査を行う場合には、必要に応じて、原価基準法に準ずる方法(総原価=独立企業間価格)と同等の方法、または、取引単位営業利益法(利益指標は総費用営業利益率)に準ずる方法と同等の方法の適用について検討するものとされています。

 

 ● 当該改正の影響は?

移転価格調査において、企業グループ内の役務提供に係る独立企業間価格算定は争点となりやすい項目です。今回の改正で、原価に上乗せするマークアップ率は5%に固定されたため、マークアップ率を5%に設定している場合には、マークアップ率自体についての論争は避けられるでしょう。

 

いずれにせよ、企業グループ内の役務提供取引について、企業が「簡易な算定方法」(原価+5%)を利用する場合でも、その内容を記載した書類等を作成・取得し、保存することが適用要件の1つですので、注意が必要です。

  

(2) 株主活動の例示の追加

従来、親会社から海外子会社に対して行う支援が、もっぱら自らのために行う株主としての法令上の権利の行使または義務の履行に係る活動(株主活動)である場合は、対価を請求する必要はないものとされています。たとえば、株主総会の開催、株式の発行、有価証券報告書の作成がそれにあたります。

 

今回の改正では、株主活動の例示として、親会社の株式の上場、親会社による国別報告事項(移転価格文書の1つ)に係る記録の作成等、企業集団の業務の適正を確保するための必要な体制の整備等などが、追加されています。

 

 

2.事前確認に係る手続の改正

事前確認とは、納税者が国外関連者との取引にあたり、自らが最も合理的と考える独立企業間価格の算定方法等について、税務当局に事前に確認を申し出た場合に、税務当局がその申し出を受けて検証を行い、確認する制度です。

 

今回の改正では、事前確認に係る手続の明確化が図られました。具体的には、以下のような手続が明確化または追加されています。

 

 ・   事前確認審査を保留する場合の例示の追加

 ・ 事前確認の申出から相当期間を経過した場合の取扱いの明確化

 ・ 事前確認を行うことができない場合の例示の追加

 ・ 資料の提出期限の明確化

 

以上

*本稿は、日本の朝日税理士法人の提供を受けています。

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