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CHINA 海外派遣社員 源泉課税
【CHINA】中国駐在員の日本への逆出張における個人所得税問題について
2025.06.06
※ 本ブログはBUSINESS PARTNER株式会社BPアジアコンサルティング の原稿提供により掲載しております。
トランプ関税は中国が最大のターゲットとなっており、中国現地法人への影響を懸念している企業グループも多いと思います。
この対応のために、中国現地法人の駐在員が日本本社に逆出張するケースもあると思われますが、この場合日本にて個人所得税の課税問題が発生することがあります。
何が問題となるのか
回答:183日免税ルールの対象外となるケースがあるためです。
183日免税ルールとは、183日を超えない短期滞在者に対しては個人所得税を免除するという日中租税条約で定めた規定です。
但しこれには以下の3つの要件があります。
- 相手国での滞在が183日を超えないこと
- その報酬(給与)は国外の使用者が払うこと
- その報酬(給与)を国内の施設等が負担しないこと
この183日免税ルールは、従来は日本本社社員が中国に出張する際に検討されることが多かった規定ですが、中国駐在員が日本に(逆)出張するときにも当然適用されます。
中国駐在員を例に改めてこの3要件をみてみますと:
- 日本への出張が183日を超えない → それほど長く出張しないので問題なし
- 駐在員の給与は中国現地法人が負担している → 現地法人が給与支給しており問題なし
- 日本本社が駐在員給与を負担している → 日本本社が給与の一部を支給している
給与格差等の理由から、日本本社が駐在員の給与の一部を負担しているケースは多く見られます。このような企業の駐在員が日本本社に出張すると、免税の要件を満たしておらず、たとえ1日でも出張すれば、その給与に対して日本の個人所得税が課税されることになります。
では免税が適用されなかった場合、どのようにすればよいのでしょうか。
日本滞在が183日を超えない場合を例にすると以下の通りとなります:
- 日本の課税対象 日本本社が支給する給与のみ(中国現地給与は含まず)
- 課税方式・計算 日本本社にて非居住者課税率42%の日数按分を源泉徴収
(日本への出張が183日を超えますと、中国現地給与にも日本の課税権が及びますが、そのケースは少ないと思われ本書では割愛いたします)
一方、中国では日本・中国双方の給与に対して中国個人所得税を計算納付していますので、日本給与は二重課税の状態になります。
これに対しては、中国にて外国税額控除を受けることで、二重課税を整理することとなります。
以上が概要となるのですが、これを実務に落とし込むには多くのポイントがあります。
まず、ホームリーブなどのプライベートな帰国について、これは勤務ではありませんので日本の課税範囲には該当しません。
しかしホームリーブの際に日本本社に立ち寄りちょっとした報告をする、等の勤務・勤務外が混在しているケースもあるでしょう。
よって、単純に入出国の日数をカウントすればよいというものではなく、その滞在内容を正確に把握・管理する必要があります。
しかし海外駐在員のこれら勤務管理は通常現地法人が行うものであり、日本本社の人事労務部門にその意識がないのが一般的です。
また日本の勤務日数を把握管理した後も、これを毎月の源泉徴収計算・納付実務・スケジュールのハードルも高いと思います。
さらに、日本で納税した後に中国で外国税額控除を行う必要がありますが、現地法人におけるその実務対応にも困難が伴います。
実は本件問題は以前から存在していたのですが、企業・課税当局もあまり注目していませんでした。
しかしコロナ禍により日本に長期滞在する駐在員が増えたことを受け、日本の課税当局も既に周知把握しており、既に指摘を受けている企業グループも出てきています。
また中国は日本からの駐在員が最も多い国であり、その重要度・注目度が最も高い地域と言え、本件問題に該当する企業グループに置かれましては十分ご留意ください。
参考:
株式会社BPアジアコンサルティングは日本(東京)と中国(上海)に展開する会計税務の専門コンサルティングファームであり、中国駐在員の中国個人所得税の申告納税代行業務も行っております。
当該業務では上述の問題点の整理や中国現地法人から駐在員給与情報を隔離するなど、様々なメリットがございますので、ご関心ありましたらいつでもお問い合わせください。
この記事について、中国進出のお問い合わせは CONTACT までどうぞ。