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【CHINA】中国個人所得税-全世界所得課税の影響と対応について

2025.05.07

※ 本ブログはBUSINESS PARTNER株式会社BPアジアコンサルティング の原稿提供により掲載しております。

 

2025年度は中国駐在員にとって全世界所得課税対象者が発生する初めての年になります。
これは2019年に中国個人所得税法が改正され、外国人は2019年度以降の6年間連続して中国に滞在(暦年ごとに183日以上)すると、全世界所得に対して課税されると定められたためです。
つまり2019年-2024年の6年間において、毎年183日以上中国に滞在していると、2025年度は全世界所得に対して課税がなされるのです。

但し、1回で30日を超える出国があった場合、その時点にて6年のカウントはリセットされます。しかしこの6年間はコロナ禍があり容易に日本に帰国できなかった時期があること、また1回で30日を超えるような日本への一時帰国は現実にはハードルが高いこと、更にこのような規定を知らずずっと中国に滞在し続けた、等の理由で6年に達してしまった駐在員も多いかと思います。

本記事では、滞在6年を経過し全世界所得課税対象となった駐在員の影響と対応について解説いたします。

全世界所得の具体例:

6年に達していない駐在員の課税対象は原則として中国国内源泉所得[注1]であり、国外機構(例:日本本社等)が負担する中国国外源泉所得は課税対象外となります。
具体的には、以下が挙げられます。

  • 日本の留守宅から得られる不動産賃貸所得
  • 日本の不動産や有価証券の譲渡所得

また「国外機構が負担する」中国国外源泉所得の具体例には、日本本社が一部補助をする従業員持ち株の譲渡所得が挙げられます。
全世界所得課税になると、これらの国外源泉所得も中国の課税対象になってしまうのです。

[注1]中国国内機構が負担する中国国外源泉所得も課税対象ですが、実務ではレアケースですので割愛します。

以上の対応方法は、2025年度において183日以上滞在しているかどうかにより大きく異なります。

183日未満の滞在の場合:

つまり2025年6月末までに日本に帰任するケースです。この場合2025年度は中国非居住者になるため、確かに2019-2024年の6年間中国滞在=全世界所得課税対象となったとしても、その実務が始まる2025年度が非居住者のため、結果全世界所得課税はかかりません。
いわば「逃げ切り」と言えます。

183日以上滞在の場合:

2025年7月以降も中国に滞在しているケースです。この場合2025年度は中国で全世界所得課税が課されるため、前述の日本での不動産賃貸所得や譲渡所得などがあると、中国で申告納税をしなければならなくなります。
この場合、中国=居住者、日本=非居住者であるため、日本で発生した個人所得税は中国で外国税額控除することが可能ですが、その実務処理は煩雑でもあります。
不動産・有価証券の売却などは、その時期を検討するのも一考です。(もちろん既に賃貸している不動産所得などは自由な調整が困難であるのはいうまでもありません。)

その他:

では2025年度において、1回30日の一時帰国を実施したらどうなるのでしょうか。この場合連続6年はリセットされますが、それはあくまで2026年度からの個人所得税であり、2019年-2024年の6年滞在がリセットされるわけではありません。
よってこの場合、2025年度は全世界所得課税となってしまいますが、2026年度になれば通常の課税へ戻る、ことになります。

また相続税を気にされる方もいらっしゃると思います。全世界所得課税対象期にて相続が発生した場合、一般に金額規模も大きく、これが中国で課税されると大変なのでは、と心配される方もいらっしゃると思います。しかし中国ではそもそも相続税が規定されていない為、相続財産の取得に中国個人所得税は課税されないと思われます。

そもそも駐在員は中国でビジネスをするために中国滞在しているわけで、個人所得税がかかる・かからないことをもって一時帰国したり帰任したりするのは本末転倒と言えます。しかしもし可能な範囲で調整・対応ができるのであれば、それにより影響を回避することは有用と思われます。

 

参考:

弊グループ(株式会社BPアジアコンサルティング(BP日本)、上海麦統商務諮詢有限公司(BP中国))では、中国駐在員の中国個人所得税の申告納税代行業務を行っております。当該業務では中国現地法人から駐在員給与情報を隔離できるなど、様々なメリットがございますので、ご関心ありましたらいつでもお問い合わせください。

 

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