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OECD多国間協定で課税漏れ防止へ!(BEPS行動計画15「多国間協定の開発」)

2014.12.02

2014年10月29日付の日本経済新聞朝刊では、以下の記事(抜粋)が掲載されました。

「課税漏れ 多国間で防止-2国間協定に限界 OECD、2016年にも数十カ国連携:
日米など先進34カ国で構成する経済協力開発機構(OECD)は多国籍企業への課税漏れを防ぐため、国際協調の新たな枠組みを作る。

2016年にも数十カ国が参加する多国間協定を結び、統一した国際課税ルールをすぐに反映できる体制を整える。現在は「日米租税条約*1」など2国間の協定しかなく、3つ以上の国を舞台にした税逃れに対応しにくい。企業のグローバル化の進展に対応し、政府側も多国間連携を進め、行き過ぎた節税策を封じる。」

*1: 租税条約とは、「国と国との間で結ばれる租税に関する合意」を言います。

これは、本年9月16日に発表された、OECD加盟国とG20(20カ国・地域を構成する中国やインドなどの新興国)の共同プロジェクトであるBEPS*2行動計画15「多国間協定の開発」(原題:「Developing a Multilateral Instrument to Modify Bilateral Tax Treaties」)に係る勧告(BEPS第1次提言)についての記事です。

*2: BEPSとは、Base Erosion and Profit Shiftingの略(日本語では、「税源浸食と利益移転」)で、多国籍企業が各国の税制の違いや租税条約等を利用して所得を軽課税国・無税国に移転し、グローバルに租税負担を免れていることを指します。

このOECD/G20 の勧告の主旨は、「BEPS対策の措置を実施するためには租税条約の改正が必要なものがあるが、3000以上もある2国間条約を個々に改正すれば、膨大な時間とリソースが必要である。そこで、多国間協定により多数の租税条約を一挙に改正し、BEPS対策措置を効率的に実施していくべきである。」というものです。

OECD/G20は、「専門家グループによる議論の結果、多国間協定は望ましいうえ、実現可能である。」と結論づけています。今後は、2015年初頭に多国間協定の正式交渉のための国際会議を招集する予定です。

この交渉が成功し多国間協定ができれば、多国籍企業の各国の税制の違いや租税条約等を利用した租税回避策へ効率的に対応することが可能となるものと思われます。

しかし、多国間の交渉は国と国との利害が対立しがちであり、合意に達することは容易ではありません。OECDが95年に交渉を開始した多国間投資協定が、参加をとりやめる国が出てきて98年に交渉とりやめになった例もあります。

OECD/G20各国が行き過ぎた節税策を封じるため、立場の違いを埋め、どこまで連携できるか、今後の行方が注目されます。

以上