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海外派遣社員と労災保険

2014.09.09

日本の労働者災害補償保険(以下、「労災保険」という)は、原則として、海外派遣社員の災害は対象外とされています。これは、労災保険の適用が、本来、労働者の日本国内における災害に限られているためです。

しかし、外国における同様の制度の適用範囲や給付内容が必ずしも十分とは言えないケースがあると考えられることから、我が国では特別加入という制度が設けられていて、海外派遣社員についても日本の労災保険による保護を受けられるようになっています。

 

海外派遣社員が日本の労災保険の保護を受けるためには、国内の事業主が、以下の要件のすべてを満たしたうえで行政機関に申請をし、政府の承認を受けることが必要です。具体的には、所轄労働基準監督署長を経由して所轄都道府県労働局長に特別加入申請書を提出することになります。

1 国内の事業について労災保険の保険関係が成立していること

2 国内の事業が継続事業であること

3 次のいずれかの者を派遣するものであること

・日本国内の事業主から海外の事業に使用される労働者として派遣される者

・日本国内の事業主から特定事業に従事させるために事業主その他の労働者以外の者として派遣する者

(注1)海外の事業については、有期事業でも可です。

(注2)特定事業とは、海外の事業が「常時300人以下(金融・保険・不動産・小売業は50人以下、卸売・サービス業は100人以下)の労働者を使用する事業」をいいます。

 

政府により海外派遣者の特別加入が承認されると、原則として、一般的な国内の労働者と同様に保険給付等が受けられるようになりますが、二次健康診断等給付や特別給与を基礎とするボーナス特別支給金の給付は対象外です。

なお、海外派遣者ではない海外出張者の場合は、特別な申請をしなくても労災保険が適用されることになります。ここで問題となるのが、「海外派遣」と「海外出張」の違いです。一般的には、海外の事業所に所属をして海外の事業主の指揮に従って勤務する場合は「海外派遣」であり、国内の事業所に所属をして国内の事業主の指揮に従って勤務する場合は「海外出張」と区別されています。

しかし、実務上は「海外派遣」と「海外出張」の区別が困難なケースが見受けられます。また、労災保険の特別加入制度への加入は任意であり、加入するか否かは派遣元である事業主の意思に任されています。いざという時のために、日本の労災保険への加入について、事前に所轄労働基準監督署などに相談しておくのもよいと思われます。