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JAPAN 外国子会社合算税制Anti-Tax Haven Rules 税制改正 

平成29年度税制改正 外国子会社合算税制(タックスヘイブン対策税制)の抜本的な見直し

2017.06.30

平成29年度税制改正において、外国子会社合算税制(タックスヘイブン対策税制)の抜本的な見直しが行われましたが、移転価格税制と同様、海外に子会社等を持つ日本企業への影響は少なくありません。本ブログでは、当該改正法の概要を見て行きます。

現行の外国子会社合算税制とは?(タックスヘイブン対策税制とは?)

日本の内国法人や居住者が、税負担のない国や日本と比べて著しく低い国・地域に子会社等を設立して、それらの子会社等を通じて取引を行うことにより、税負担を軽減したり、回避したりする行為に対処するために導入された制度です。

現行では、内国法人や居住者が直接および間接に株式等の50%超を有する外国法人が、租税負担割合が20%未満の国・地域に所在している場合、その法人において獲得した所得のうち、内国法人や居住者の有する持分割合に応じた所得をその内国法人や居住者の所得に合算して課税することになります。

ただし、日本企業の海外進出等を阻害しないように、適用除外基準を設け、独立した企業として健全な事業活動を行っている一定の企業については、合算課税を行わないこととしています。

どのような改正が行われたか?

① 租税負担割合基準(いわゆるトリガー税率:20%)の廃止

現行では、外国関係会社等の租税負担割合が20%以上であれば、一律、合算課税の対象となりません。改正法では、このような合算課税の対象となるかを判定するための租税負担割合基準(いわゆるトリガー税率:20%)が廃止されます。

改正法では、租税負担割合30%以上であれば、原則として合算課税はありません。30%未満でも、ペーパーカンパニー、キャッシュボックス法人ならびに財務省が指定するブラックリスト掲載国所在法人(以下、ペーパーカンパニー等という。)ではなく、租税負担割合が20%以上であれば、原則として合算課税の対象となりません。20%未満であれば、「経済活動基準」のすべてを満たす場合に、受動的所得の合算課税(少額免除基準あり)の対象に、「経済活動基準」のいずれかを満たさない場合には、会社単位の合算課税の対象となります。

30%未満の場合に、ペーパーカンパニー等に該当すれば、会社単位の合算課税の対象となります。

② 実質支配基準の導入

合算対象とされる外国法人の判定方法ならびに当該税制の適用対象となる内国法人等の判定方法に「実質支配基準」が導入されます。

③ 特定の外国関係会社等に係る合算課税制度

租税負担割合が20%以上(30%以上の場合は除く)であっても、ペーパーカンパニー等、特定の外国関係会社に該当する場合には、会社単位での合算課税が適用されます。

④ 適用除外基準の見直し

会社単位の合算課税制度が発動されるか否かを判断する際の「適用除外基準」についての内容の見直しが行われ、「経済活動基準」として新たに定義づけされます。なお、国税当局から、外国関係会社が「経済活動基準」を満たすことを証明する書類の提出が求められた場合において、期限までに提出をしないときは、その外国関係会社は「経済活動基準」を満たさないものと推定される規定が設けられます。

⑤ 部分合算課税対象となる所得範囲の見直し

部分合算課税の対象となる所得の範囲が、「資産性所得」から「受動的所得」とされ、その範囲が拡大されます。

⑥ 部分合算課税時の少額免除基準の見直し等

部分合算課税の適用にかかる少額免除基準(1千万円から2千万円に引き上げ)が見直されます。

⑦ 外国関係会社に係る財務諸表等の添付

以下のような、外国関係会社に係る財務諸表等を確定申告書に添付する必要があります。

 ・租税負担割合が20%未満の外国関係会社

 ・租税負担割合が30%未満の外国関係会社(ペーパーカンパニー等、一定のものに限られます)

適用時期

この新・外国子会社合算税制は、外国関係会社の平成30年4月1日以後に開始する事業年度から適用されます。グローバルに事業を展開する企業等は、改正法の内容を把握し、海外関係会社等が会社単位、または、部分的に合算課税の対象となるか否か、なった場合、税額やコンプライアンスへの影響はいかなるものか、すぐに検討を行う必要があります。

以上