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日本企業が進出先国で抱える国際課税問題-恒久的施設(PE)

2018.10.28

経済産業省が本年(平成30年)4月25日に公表した「BEPSプロジェクトを踏まえた移転価格税制及び各国現地子会社等に対する課税問題に係る調査・研究事業(平成29年度)調査報告書」では、海外に現地法人を有する日本企業に対するアンケート調査により、進出先国で抱えている国際課税問題の分析を行っています。

本ブログでは、恒久的施設(PE)に係る課税事案を見て行きます。

【日本企業が進出先国で抱えている課題は?】

当該アンケート調査によれば、海外現地法人を有する日本企業が過去6年間に国際的な二重課税の原因となるような課税措置を受けた国・地域は、事業数ベースで、中国、インドネシア、インドなどのアジア新興諸国が上位を占めています。また、課税事案の内容としては、半数近くが「移転価格税制」となり、「恒久的施設(PE)」、「ロイヤルティ」が続いています。本ブログでは、「恒久的施設(PE)」を取上げます。

【恒久的施設(PE)の課税事案】

恒久的施設(PE)=事業を行う一定の場所であって企業がその事業の全部又は一部を行っている場所を言います(OECDモデル租税条約5①)。

事業所得については、「PEなければ課税なし」という考え方が国際的課税原則となっています。PEの範囲は、基本的に当事者国の国内法と当事者国間が締結する租税条約によって決まります。

今回のアンケート調査によれば、中国、インド、インドネシア、その他の国で、以下のような課税事案が見受けられます。

①出張者・出向者のPE認定

◆出張者に対して、183日を超えていないにもかかわらずPE認定され、現地において課税された。(中国)

◆PE判定に関する当局見解が以前と変わり、日本からの出張者がPE認定された。(中国)

◆インドへの出張者滞在日数183日越えに関し、出張者のカウント数について異議申し立て中であ(インド)

◆中国法人の設備投資に、技術支援契約を締結し、日本より専門技術者を出張により派遣した。その際、技術支援契約期間について現地事務所と認定され、業務支援料を基準とした企業所得税他を課税された。(中国)

②駐在員事務所のPE認定

◆インドネシアにおいて補助的・準備的な活動を行っている駐在員事務所がPEとして認定された。(インドネシア)

◆機械部品の卸売りのための情報収集や補助業務を行うために出向をしたが、当該出稿が営業活動にあたるとして、PE認定された。(中国)

◆弊社職員によるケニアでの市場調査業務の実施について、ケニアでは、駐在員事務所という法人格は存在せず、ケニア国内法では、弊社のケニア支店として取り扱われると考えられるとの指摘を受け、PE認定された。(ケニア)

③子会社・第三者のPE認定

◆インドネシア法人の第三者であるA社への部品販売取引において、A社の売上の大半が弊社の製品であり、A社は弊社の従属代理人であるとしてPE認定された。A社と弊社間の技術支援料等に基づき算出した金額をPE所得とみなし、課税を受けている。(インドネシア)

【恒久的施設(PE)認定による課税リスクとは?】

租税条約では、通常、日本企業の進出先国で得る事業所得については、PEを有する場合に限って課税できるものとしています。PEの範囲は、基本的に当事者国の国内法と当事者国間が締結する租税条約によって決められています。日本が外国と締結している租税条約におけるPEの定義は、基本的にはOECDモデル租税条約を参照して規定されています。

ところが、それらの規定にかかわらず、実際の課税の執行状況は国ごとに異なっており、特に、中国、インドネシア、インドなどではPEの範囲を拡大解釈する傾向にあるようです。

上記のように、出張者・出向者、駐在員事務所などがPEに認定されれば、PEに帰属する事業所得は現地で課税対象となります。ここで注意したいのは、日本においては、当該外国における課税が租税条約に適合するものでなければ、外国税額控除の適用を受けられないということです。よって、当該外国と日本で二重課税が発生することになりますが、その排除には、税務当局に相互協議を申請しなければなりません。相互協議に持ち込んだとしても、時間がかかり、また、日本と当該外国の国税当局が合意に至るとは限りません。

【PE認定リスクを軽減するには?】

①出張者・出向者のPE認定

アンケート調査結果に見られるように、中国やASEAN新興国等の税務調査においては、日本との租税条約の規定にあるPEの範囲が拡大解釈され、日本からの出張者や出向者の事業活動が日本親会社のPEであるとして認定されることがあります。

これを少しでも避けるには、出張者の現地における滞在日数、滞在先、活動内容に注意して、PE認定されない状況を整理し、それを文書化しておくことが望まれます。

また、現地の子会社に日本親会社から出向者を派遣する際は、当該出向者と現地子会社との間で雇用契約を結び、その内容を契約書上で明確化しておくことが重要です。

②駐在員事務所のPE認定

駐在員事務所は、連絡業務、情報収集、市場調査など、将来、日本企業が事業活動を本格的に行うための補助的・準備的活動にその業務を限定され、収益を伴う直接的な営業活動は認められていないため、一般的にPEに該当しません。ところが、中国やASEAN新興国などでは、営業活動を行っているものとして、PE認定されるケースが見受けられます。

このような課税リスクを軽減させるためには、現地において売買契約の締結等を行わないこと、また、営業活動を行っていると判断される外観を作らないことが重要です

③子会社・第三者のPE認定

海外子会社等がリスクを負担せず親会社の取次を行っているにすぎないとし、海外子会社が代理人としてPE認定されることがあります

海外子会社が日本の親会社のために、親会社の名において契約を締結する権限を有し、その権限を常習的に行使している場合に、海外子会社が日本親会社に従属しているとみなされるケースなどです。

代理人の独立性についての判断は国によって異なりますので、十分に現地の税制とPE課税の執行状況を把握し、対策を立てることが課税リスク軽減につながります。

以上