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海外子会社に対する役務提供 第3回:海外子会社の税務 「タイ・インドネシアの場合」

2013.09.06

★このブログは朝日税理士法人(東京) の原稿提供により掲載しております。

これまで数回にわたり、日本の企業の海外子会社に対する役務提供について、日本、海外両サイドの税務を概観しています。

今回は、日本の親会社が海外事業部の費用に何%かのマークアップを付加した金額を経営指導料として海外子会社に請求するような、役務提供が日本国内で行われているケースをとりあげます。

当該経営指導料に関する海外子会社側の税務を見て行きましょう。国によって税法が異なりますので、ここでは、タイとインドネシアの場合をとりあげます。

【海外における取扱い】

1.当該経営指導料は、海外子会社において税務上損金算入を制限されるか?
2.海外子会社が日本に当該経営指導料を支払う場合に、送金の制限はあるか?
3.2の送金に際し、源泉税を徴収する必要があるか?

タイのケース

1.当該経営指導料は、タイの海外子会社において税務上、損金算入を制限されるか?

タイの実務においては、当該契約書とそのサービスの実態、証拠資料等の提出が求められます。実際、どのようなことを親会社に指導されているのかについて尋ねられ、適切な回答と証拠資料を提出できなければ、否認される可能性が高くなります。したがって、導入に際しては慎重な検討が必要です。

対価の妥当性については、当該経営指導料が移転価格税制上の独立企業間価格に設定されていれば理論的には妥当とされます。よって、実務においては親会社における関連サービスの時間集計に人件費単価を乗じマークアップしたのものを請求することになります。しかし、タイの税務調査官はそのような資料があっても簡単には対価の妥当性を認めないことが少なくありません。よって、その点を考慮の上、対価を決定する必要があります。尚、独立企業間価格とは、取引が第三者間で行われた場合に設定される価格を言います。

2.タイから日本に当該経営指導料を支払う場合に、送金の制限はあるか?

経営指導料の契約書と、当該契約に基づくInvoiceを銀行に提示すれば送金は問題なくできると考えます。

3.2の送金に際し、源泉税を徴収する必要があるか?

タイの国内法上は、経営指導料のような役務提供料については、15%の源泉税が課されます。ただし、日本とタイの租税条約(注1)では、役務提供料は事業所得に該当し、日本の親会社がタイ国内に恒久的施設(注2)を有しない限りタイでの源泉税はかからないものと理論的には解釈できると考えます。

しかしながら、タイの税務当局は日タイ租税条約第12条の使用料の解釈を幅広にとらえて指導していることがあり、ノウハウの対価として15%の源泉税対象としているケースが多くなっています。したがって、源泉徴収しないという選択は、税務当局にチャレンジすることを意味します。

尚、タイのVAT(付加価値税)の対象になりますので、専用の申告書フォームで、対価額に7%を乗じたVATを送金月の翌7日までに税務署に申告・納付する必要がありますので注意してください。。

(注1)租税条約:国と国との租税に関する協定のこと。

(注2)恒久的施設(Permanent Establishment:PE):事業を行う一定の場所をいうが、定義は租税条約によって異なる。国際課税では、「恒久的施設なければ課税なし」という大原則があり、その有無によって課税関係が異なる場合が多い。

インドネシアのケース

1.当該経営指導料(役務提供料)は、インドネシアの海外子会社において税務上、損金算入を制限されるか?

インドネシアの税務上は、当該経営指導料が、独立企業間価格に設定されていれば損金算入の制限はありません。ただし、実務上は、当該経営指導料の損金性をインドネシア税務当局に認められるように、移転価格に関する文書化をしておくことが勧められます。

2.インドネシアから日本に当該経営指導料を支払う場合に、送金の制限はあるか?

インドネシアから日本へ、1万USドル以上の外貨を送金する場合には、インドネシア中央銀行への報告義務があります。

3.上記質問2の送金に際し、源泉税を徴収する必要があるか?

インドネシアの税法上、当該経営指導料のような役務提供料は、非居住者及び外国法人に対して支払われる「サービスに対する報酬」にあたり、20%の源泉税が課されます。このような非居住者に対する源泉税はPPH26と呼ばれています。

ただし、日本とインドネシアの間で締結された租税条約上、当該役務提供料は事業所得に該当しますので、親会社がインドネシアに恒久的施設を有しない限りにおいては、課税を受けないとされています。すなわち、源泉税の徴収義務はありません。

租税条約の適用を受ける場合には、親会社は、定型の居住者証明書(Certificate Of Domicile “COD”)を、子会社を通じてインドネシアの税務当局に提出する必要があります。ただし、CODを源泉税の申告書提出期間後に提出すると、租税条約は適用されないことになります。

なお、当該「サービスに対する報酬」はインドネシアの付加価値税(VAT)の対象になります。