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【CHINA】中国個人所得税法改正による外国人駐在員への影響について

2021.10.14

LIBRARY【特集】 新型コロナウィルス関連

 

※ 本ブログはBUSINESS PARTNER 株式会社BPアジアコンサルティング の原稿提供により掲載しております。

長引くコロナ問題により、中国に滞在する日本人駐在員の皆様も移動等で大変なご苦労をされていると思います。そのような中、3年前に改正された中国個人所得税法が、来年2022年にも影響を及ぼすという問題があり、以下その内容をお知らせいたします。

中国個人所得税法は2018年に改正され、分離課税から総合課税へ、税率変更、控除項目などが刷新される等の変更を受けたのですが、一般的な日本人駐在員にとって大きな影響を受けるポイントはあまりなく、比較的平穏に経てまいりました。

しかし実は2018年改正には一部の項目について「経過措置」を設けており、この経過措置が2021年12月末をもって満了となります。その概要は以下の2点です。

年1回性賞与の優遇規定

2018年改正前の中国個人所得税法では年1回性賞与の優遇規定を設けておりましたが、経過措置としてこの優遇規定を当面の間適用することも容認されていました。

この優遇規定とは、「賞与を12分の1した金額に該当する累進税率」(=低い税率*)を適用し、この累進税率に「賞与総額」を乗じて税額を算定するという内容です。
(* 個人所得税率は累進税率のため、賞与を12分の1すると適用税率も低くなる)

これは改正前の個人所得税法が月次申告納税を基本としていたため、賞与月は支給総額が増加し、適用される累進税率も高くなってしまう(=納税額も高くなる)ことへの緩和でした。

2018年に年度総合課税の概念が導入された結果、このような月次変動への緩和は意味をなさなくなりましたが、急な制度変更による現場混乱の防止の観点から、2021年12月まで経過措置を設けていたものでした。

この度の経過措置満了をもって2022年1月からこの優遇規定が適用できなくなるのですが、この場合一般的には個人所得税負担額が増加いたします。
(理由:年1回性賞与優遇規定の税計算は、賞与のみ(=給与を加味しない)を12分の1した低い額に相当する累進税率を適用するため、総合課税に比べて適用税率・税額が低くなる)

しかし日系企業では賞与は夏冬2回支給する会社も多くみられます。
(日本では夏冬と年2回賞与を支給する企業が多いのに対し、中国では春節前に賞与を支給する(=つまり賞与は年1回)企業が多く、結果優遇規定も年1回となりました。)

この場合当然2回目の賞与には優遇規定は適用できず、「給与+賞与」合計に対する高い累進税率が適用されるため、相対的に税額が増加していました。
これについて2022年からは総合課税に切り替わり、給与と賞与の区分による税額変動はなくなるため、2回目の賞与については税負担が軽減されることになります。
結果2022年より税負担が大きくなる・小さくなるかは、夏・冬賞与や給与額により変わってまいりますが、いずれにせよ、以上のような影響があることに留意が必要です。

外国人駐在員に付与される各種手当に対する免税規定

従来外国人に対しては、住宅手当、語学訓練費、子女教育費に対して免税を適用することができました。しかし経過期間の終了後これらの免税優遇は撤廃されます。

一方2018年改正法では、各種控除項目を規定しており、その中で住宅賃料は月800-1,500元/月、子女教育費は1,000元/月/人の控除が可能となります。
(なお語学訓練に相当する控除項目はありません)

一般的な日本人駐在員のマンション賃料、子女教育費相場から鑑みると、これらの控除金額は金額が低く、その意味では税負担の増加になると思われます。また控除のためには各種資料の提出が必要となるため、その準備を失念しないよう、注意が必要です。

以上の概要となりますが、2018年に改正された中国個人所得税法は既に何年も前のものであるため、2022年にこのような影響があること、各種対応が必要であることを知らない企業も多く、これら企業のご担当者様に置かれては注意が必要です。

以 上

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