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移転価格文書化

税務コンプライアンスを向上させ、税務リスクを軽減(日本の税務)

最近、業績を優先するあまり、コンプライアンスを置き去りにした結果、社会的非難にさらされる企業のニュースをよく耳にします。税務コンプライアンス(納税者が納税義務を自発的かつ適正に履行すること)についても、その欠如は、追徴課税、税務訴訟などの財務リスクだけでなく、実態が公になった場合の風評リスクを招き、それが、企業の売上や資金調達に影響を与えることにもなりかねません。

 

税務コンプライアンスを向上させるためには、「企業のトップマネジメントが税務について自ら適正申告の確保に関与し、必要な内部統制を整備すること」が必要です。これを、税務に関するコーポレートガバナンス(税務ガバナンス)と言います。

 

我が国の課税当局である国税庁も、大企業の税務コンプライアンスの維持・向上に向けた以下のような取組を推進しています。

 

   1.税務に関するコーポレートガバナンス(税務ガバナンス)の充実に向けた取組

   2.大規模法人の「申告書の自主点検と税務上の自主監査」を推進

   3.「移転価格ガイドブック~自発的な税務コンプライアンスの維持・向上に向けて~」の公表

 

 

1.国税庁の税務ガバナンスの充実に向けた取組

 

国税庁は、平成28(2016)年6月、「税務に関するコーポレートガバナンスの充実に向けた取組の実務実施要領の制定について」(事務運営指針)を公表しています。

 

<指針の対象法人>

当該指針の対象となるのは、実地調査が行われる国税局特別国税調査官所掌法人(資本金がおおむね40億円以上の法人が該当すると考えられる。)です。

 

<指針の主な内容>

①税務ガバナンスの確認

  • 税務調査の機会を利用して、「税務に関するコーポレートガバナンス確認表」の作成を納税者に依頼

 

②税務ガバナンスの判定

  • 確認項目の評価・判定(税務調査への対応状況や帳簿書類等の保存状況も勘案)

 

③トップマネジメントとの面談

  • 調査結果の説明、評価の低かった事項についての効果的取組事例の紹介、トップマネジメントとの意見交換

 

④税務ガバナンス判定結果の活用

  • 判定結果は、調査必要度の重要な判断材料の1つとして活用

 

⑤税務ガバナンスの状況が良好な法人への対応

  • 税務ガバナンスの状況が良好であり、調査結果に大口・悪質な是正事項がなく調査必要度が低いと判断される法人については、一般に国税当局と見解の相違が生じやすり取引等を自主的に開示(自主開示)し、その適正処理を当局が確認することを条件に、調査間隔を延長する。

 

⑥調査間隔延長後の実地調査における対応

  • 次回の実地調査の際に税務ガバナンスを再判定し、調査間隔の見直しを行う。

 

 

2. 大規模法人の「申告書の自主点検と税務上の自主監査」を推進

 

国税庁は、平成27(2015)年3月、納税者による自発的な適正申告の推進のため、調査課所管法人(資本金1億円以上の法人等)に向けて、税務申告書提出前に、申告書の自主点検や税務上の観点からの自主監査を行う際に活用するための確認表を公表しています。確認表は下記の2種類があり、国税庁のホームページに掲載されています。

 

「申告書確認表」:提出直前の申告書の自主点検用

「大規模法人における税務上の要注意項目確認表」:申告書を作成する前の決算調整事項や申告調整事項の把握漏れ等の自主監査用

 

これらの確認表は、税務署への提出は不要で、申告誤りの未然防止、税務調査で処理誤りが指摘されるリスクを軽減するものとされています。

 

 

3.「移転価格ガイドブック~自発的な税務コンプライアンスの維持・向上に向けて~」の公表

 

国税庁は、平成29(2017)年6月に、「移転価格ガイドブック~自発的な税務コンプライアンスの維持・向上に向けて~」を公表しています。

 

これは、OECD/G20のBEPSプロジェクトの進展や、移転価格文書化制度の整備などの移転価格を取り巻く環境変化の下、移転価格税制に関する納税者の自発的な税務コンプライアンスを高めることを目指し、国税当局の事務運営(取組方針、具体的な施策)を見直すとともに、納税者の予測可能性や行政の透明性を向上させることを目的としています。

 

このガイドブックには、「同時文書化対応ガイド」として、移転価格文書の1つであるローカルファイルの作成サンプルなどの、実務に有用な情報が掲載されています。

 

*     *      *

 

企業は、そのトップマネジメントの積極的な関与によって、税務ガバナンスを充実させ、税務コンプライアンスを遵守することによって、税務リスクというマイナス要因を取り除き、さらなる成長・発展を目指したいものです。

 

以上

 

(*当ブログは、日本の朝日税理士法人の提供を受けています。)

 

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移転価格税制の基礎 (7)
「国税庁 移転価格ガイドブック公表~2017年7月より企業訪問開始」
(日本の税制)

2017年(平成29年)6月9日、国税庁が「移転価格ガイドブック~自発的な税務コンプライアンスの維持・向上に向けて~」を公表しました。

 

移転価格文書化制度においては、2017年(平成29年)4月1日以後に開始する事業年度より、「ローカルファイル」を確定申告書の提出期限までに作成・保存するという、「同時文書化」が義務化されています(取引規模による免除規定あり)。

 

このガイドブックには、同時文書化対応ガイド(ローカルファイルの作成サンプル)が掲載されていますので、移転価格文書化を行う際の実務の手引きとして役立ちます。

 

また、「ガイドブック」としながらも、本年(平成29年)7月に、国税局に同時文書化対象取引に関する「相談窓口」が開設されること、及び、同7月より、税務調査官が、移転価格文書化制度に関する指導、助言のために「企業訪問」を開始することの告知も行われています。

 

◆移転価格ガイドブックの内容

移転価格ガイドブックの項目は以下のとおりです。

  1.   移転価格に関する国税庁の取組方針
  2.  移転価格税制の適用におけるポイント
  3. 同時文書化対応ガイド(ローカルファイルの作成サンプル)

 

◆相談窓口の開設(2017年(平成29年)7月より)

ガイドブックでは、同時文書化対象取引(年間受払合計50億円以上(無形資産の場合は3億円以上)の海外子会社等との取引)に関する個別照会に対応する相談窓口を、東京・大阪など全国12か所の国税局・事務所に開設するとしています。

 

個別照会の対象となる照会には一定の範囲が設けられていますが、文書の作成過程で疑問が生じる場合の、一つの解決手段となるでしょう。

 

◆移転価格文書化制度に関する指導、助言等のための企業訪問の実施(2017年(平成29年)7月より)

ガイドブックでは、国税調査官が同時文書化義務の対象見込みの企業(海外子会社等との取引が年間50億円以上(無形資産の場合は3億円以上)あることが見込まれる企業等)を訪問するとしています(訪問前に事前に電話で日時等の連絡あり)。

 

同ガイドブックは、企業訪問は「特定の納税義務者の課税標準等又は税額等を認定する」目的で行われる税務調査ではないとしています。それでも、移転価格税制全般についての取組状況や同時文書化対象取引の概要の聴取、ローカルファイルの記載内容の確認・ヒアリングが行われますので、企業担当者の応対の負担は小さくありません。けれども、移転価格調査での着眼点や想定される指摘事項等の助言が必要に応じてなされるなど、文書化を推し進めて行く上で有益なものです。よって、企業訪問は文書化推進の良い機会ととらえて、積極的に活用することが望まれます。

 

なお、この企業訪問でローカルファイルの記載内容につき指導を受けた事項について、改めて検討するよう勧告されます。また、後日の移転価格調査を含む税務調査やローカルファイルの作成状況等を確認するために企業を訪問する際に、指導、助言等を行った事項の対応状況について質問確認を行うことがあるとされていますので、注意が必要です。

 

◆今後の対応

海外子会社等との取引の年間受払合計が50億円以上(無形資産の場合は3億円以上)の企業は、企業訪問を「プレ税務調査」と位置づけ、それが税務調査の呼び水とならないよう同時文書化を推進することが肝要です。

 

海外子会社等との取引の年間受払合計が50億円未満、かつ、無形資産取引が3億円未満の企業は、企業訪問の対象とはなっていません。けれども、同ガイドブックを参考に文書化を行い、税務調査で移転価格関係書類の提示・提出要求があった場合に即時に対応できる体制を作っておくことが望まれます。

 

以上

 

【初掲載】

企業情報ウェブサイト 「イノベーションズアイ」 コラム 「中堅企業にも求められる移転価格税制対応」シリーズ」第13回 2017年6月30日

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移転価格税制の基礎 (5)~「移転価格文書化義務違反のペナルティは?」

日経新聞などの人事欄を見ると、コンプライアンス(法令順守)推進室長やコンプライアンス統括室長などの役職がよく目に留まります。コンプライアンス違反が引き起こす様々なペナルティは企業にとって屋台骨をゆるがしかねない経営リスクの1つです。

 

脱税などの法人税法違反は究極のコンプライアンス義務違反ですが、移転価格文書化義務を怠るなど、制度を知らなかったために税法で定められた書類の作成を行わなかった場合も、もちろんコンプライアンス義務違反になります。海外子会社等と取引のある企業の皆様には、是非、制度を理解し、以下の推定課税や同業者調査を受けないよう、ご注意いただきたいと思います。

 

推定課税と同業者調査とは?

平成28年度の税制改正においては、税務調査において調査官が指定する期日(取引規模によって、45日以内、または、60日以内)までに、「ローカルファイル」と言う、一定の移転価格に関する説明資料を提出しない場合、調査官は、推定課税、または、同業者調査を行えることが規定されました。

 

推定課税とは、税務調査官が独自に入手した外部の情報に基づき計算した結果をあるべき課税金額とみなして所得の更正を行うものです。つまり、調査官が同業他社の使用している同様な取引の価格や利益率を用いて、貴社のあるべき課税所得を推定するというものです。そのためには、同業他社の帳簿書類などの情報にアクセスする必要がありますが、調査官には同業他者への質問検査権が与えられ、同業者調査が可能とされているのです。

 

なお、国税庁の事務運営指針によれば、同業者調査が実施された場合に、比較の対象とした取引を選定するために用いた条件や、取引の内容などを納税者側に説明するものとされています。ただし、その際、守秘義務規定に留意せよとされていますので、比べた企業名等は明らかにされません。よって、納税者は、調査官の課税の根拠を十分に知ることができず、的確な反論もできないまま、所得を更正され、税金の追徴を受ける可能性があるのです。

 

推定課税・同業者調査回避のためのローカルファイル作成・提出

上述のように、ローカルファイル等の移転価格文書を指定期日までに作成・提出しなければ推定課税や同業者調査の対象となりますので、当該、推定課税や同業者調査はローカルファイル作成・提出義務違反のペナルティということができます。しかし、ポジティブに考えるならば、推定課税や同業者調査の条件が明確化され、移転価格税制に係る納税者の予見可能性が高まったということもできます。

 

コンプライアンス遵守に努め、推定課税や同業者調査を回避することによって、課税リスクを最小化することが重要です。

 

以上

 

【初掲載】

企業情報ウェブサイト 「イノベーションズアイ」 コラム 中堅企業にも求められる移転価格税制対応」シリーズ第11回 2017年5月269日

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移転価格税制の基礎 (3) ~ 移転価格税制の基本的しくみ(日本の税制)

平成28年度税制改正では、OECD(経済協力開発機構)の「BEPSプロジェクト」の勧告を踏まえ、移転価格文書化制度が再整備されました。貴社が海外の関連企業(国外関連者)と取引を行う場合には、本年4月1日以後に開始する事業年度分の税務申告について、この新しい制度が適用になりますので、アクションが必要です。今回は、そもそも移転価格税制の基本的しくみはどうなっているのか、ご説明いたします。

 

  • <移転価格税制とは>

移転価格税制は、国外関連者との間の取引を通じた所得の不公正な海外移転を防止するため設けられた制度です。国内の企業が国外関連者との取引(国外関連取引)を行った結果、独立した企業間で通常設定される取引価格(独立企業間価格)で行ったときと比べて利益が減少する場合に、その取引を独立企業間価格で行われたものとみなして所得を計算し、課税する制度をいいます。

 

利益が減少する場合の例としては、日本の企業が海外子会社に販売する製品を、関連のない独立した企業への販売価格よりも低価格で販売する場合があげられます。

 

  • <適用対象者と国外関連者>

移転価格税制の適用の対象となるのは、国内の企業(法人)のみで、個人には適用されません。また国外関連者とは、外国企業のうち、その企業と「特殊の関係」を有するものをいいます。例えば、発行済み株式等の50%以上を介する親子関係や兄弟姉妹関係他、実質支配関係にある場合も含まれます。

 

  • <適用対象となる取引は?>

適用対象となる取引としては、国内企業が国外関連者との間で行う、①資産の販売、②資産の購入、③役務の提供、④その他の取引があげられます。また第三者を介在させていても、実質的に国外関連者と行われる金銭の貸付、保険、信用の保証といった役務提供取引等はこれに含まれるので注意が必要です。

 

なお対価性の無い取引は移転価格税制の適用対象となりませんが、その取引が寄付金に該当する場合は、「国外関連者に対する寄付金」として扱われ、その金額の「全額」が損金(税務上の費用)となりませんので、要注意です。

 

  • <独立企業間価格とは?>

独立企業間価格とは、資産の販売・購入、役務提供といった国外関連取引の内容や、国外関連取引を行う者が果たす機能、その他の事情を考慮して、最も適切な方法により算定した価格をいいます。

 

具体的には、独立価格比準法(CUP法)、再販売価格基準法(RP法)、原価基準法(CP法)のほか、複数の価格算定方法があります。

 

  • <移転価格文書の作成義務>

企業が、国外関連者との間で国外関連取引を行った場合には、独立企業間価格を算定するために必要と認められる書類(これを「ローカルファイル」といいます)を確定申告書の提出期限までに作成または取得し、保存しなければなりません。これは、「同時文書化義務」と呼ばれています。

 

なお、前期の取引金額が50億円未満であり、かつ、無形資産取引金額が3億円未満である場合には、この同時文書化義務は免除されています。ただし、同時に作成・保存する義務はなくても、税務調査で税務調査官が提出を求めた日から60日以内の指定日までにローカルファイル提出しなかった場合には、調査官は推定課税(類似の取引を行う第三者から入手した情報等に基づき行う課税)を行うことができます。このような推定課税を避けるためには、移転価格文書を作成・保存しておく必要があるのです。

 

なお、平成28年度税制改正では、新たにマスターファイルと国別報告書の作成・提供が一定の売上げ規模の多国籍企業グループに義務付けられました。これは別の機会にご説明いたします。

 

以上

 

【初掲載】

企業情報ウェブサイト 「イノベーションズアイ」 コラム 「中堅企業にも求められる移転価格税制対応」シリーズ」第9回 2017年4月20日

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