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海外子会社

海外子会社との共同研究開発も移転価格税制の対象に

研究活動を行う際、海外子会社と費用分担契約(コストシェアリング契約)を結んで、親会社・子会社それぞれが研究開発費用を分担するケースが見受けられます。費用の分担と成果物である無形資産の持分の分配は、国境を越えて行われる取引ですので、これは移転価格税制の対象となります。

 

費用分担契約とは

企業が無形資産を開発するための研究開発を他の企業と共同で行い、研究開発費用を予測便益割合により参加企業間で分担する契約を、費用分担契約(コストシェアリング契約)と言います。

 

◆費用分担契約の長所

例えば日本の親会社と海外子会社が共同研究開発などで費用分担契約を結んだ場合、契約に参加したそれぞれが、研究開発の結果生み出された成果物である無形資産について特定の権利を得ます。各自がそれぞれ権利を持っていますので、その無形資産を利用して製造などを行う場合に、相手方にロイヤリティー(源泉所得の1つです)を払う必要がありません。よって、親会社・子会社間の源泉所得税の問題が回避できる可能性があります。また、費用分担契約をすることで、無形資産の開発に際して他社からの技術・資金供与などを受けられるため、個別の企業から見れば開発に係る費用とリスクの軽減ができるというメリットもあります。

 

◆移転価格調査における注意点

費用分担契約においては、費用負担の割合が実現した便益の割合に比べて過大であると認められる場合には、過大となった部分の費用負担額は独立企業間価格を超えるものとして税務所得の計算上、損金とならないことに注意が必要です。

 

税務当局の移転価格調査では、以下のような点を中心にして費用分担額等の適否が検討されます。

 

  • 費用分担契約に係る税務調査官のチェックポイント(抜粋)

  (出典:移転価格事務運営指針3-16)

  • ① 研究開発等の活動の範囲が明確に定められているか。また、その内容が具体的かつ詳細に定められているか。
  • ② 研究開発等の活動から生ずる成果を自ら使用するなど、全ての参加者が直接的に便益を享受することが見込まれているか。
  • ③ 各参加者が分担すべき費用の額は、研究開発等の活動に要した費用の合計額を、適正に見積もった予測便益割合に基づいて配分することにより、決定されているか。

 

また、調査においては、以下のような書類等がチェックされます。

 

  • 費用分担契約に係る移転価格調査の対象となる書類等(抜粋)

  (出典:移転価格事務運営指針3-18)

 (1) 費用分担契約の締結に当たって作成された書類

  • ① 参加者の名称、所在地、資本関係及び事業内容等を記載した書類
  • ② 参加者が契約締結に至るまでの交渉・協議の経緯を記載した書類
  • ③ 予測便益割合の算定方法及びそれを用いることとした理由を記載した書類

 (2) 費用分担契約締結後の期間において作成された書類

  • ① 各参加者が研究開発などの活動のために要した費用の総額及びその内訳並びに各参加者の費用分担額及びその計算過程を記載した書類
  • ② 研究開発等の活動に関する予測便益割合と実現便益割合との乖離の程度を記載した書類

 

以上

 

【初掲載】

企業情報ウェブサイト 「イノベーションズアイ」 コラム 「中堅企業にも求められる移転価格税制対応」シリーズ」第6回 2017年3月10日

【お問い合わせ】

朝日ネットワークスグループは、日本の朝日税理士法人と連携して、移転価格文書化等、各種税務サービスを提供しております。ご質問・ご相談等ございましたら、当HPの「資料請求・お問い合わせ」よりお気軽にお問い合わせ下さい。

 

 

企業はどのように移転価格税制におけるリスクを回避すべきか

移転価格税制におけるリスクとは?

 

移転価格税制とは、企業が海外子会社等と取引をする場合に、現実の取引価格ではなく独立企業間において通常設定される価格(独立企業間価格)を用いて、これを基に課税所得を計算する制度です。近年、大企業だけでなく、中堅企業も税務当局の移転価格調査の対象となって来ていることは、すでに第1回のコラムでご説明したとおりです。

 

移転価格税制における企業の一番大きなリスクは、所在国の税務当局から移転価格調査で申告漏れを指摘されて、過去にさかのぼって所得を更正されて多額の税負担が発生し、それが企業グループ損益に影響を与えることです。また、移転価格に関する文書化作成の義務を怠ったり、同一取引について国ごとに異なる説明をしたりすることで、コンプライアンス上の問題に発展することも、企業にとってのリスクです。

 

多くの企業では、移転価格税制についての知識不足、現状の認識不足などから、そのリスクに対処できていないのが現状です。

 

移転価格税制におけるリスクを回避するために重要な事項

 

移転価格税制におけるリスクを回避するためには、以下が重要です。

 

1 日本と海外子会社所在国の移転価格税制に関する正しい理解

 

移転価格税制は日本だけでなく、世界各国で導入されている税制です。例えば、日本側に多くの利益が計上されていて、日本でのリスクが低い場合には、逆に取引相手国でのリスクが高まることに要注意です。

 

2 海外子会社との取引状況・損益状況の把握

 

企業グループが成長している局面では、海外子会社との取引内容・条件・取引量といった状況や、当該取引に係る価格・コストといった損益状況は変化するのが一般的です。移転価格税制におけるリスクに対処するためには、これらを継続的にモニタリングして、変化があった場合は、社内の移転価格税制に係る所管部署に適示に報告する体制が必要になります。

 

3 移転価格文書の必要に応じた作成

 

平成28年度の税制改正では、原則として、①国別報告事項、②マスターファイル、③ローカルファイルの3つの移転価格文書の提出、または、作成・保存が義務化されました。その義務は、連結売上高や海外子会社との取引金額が一定未満の場合には免除されます。文書の種類ごとに作成義務の有無を検討し、必要に応じてそれを作成することが必要です。

 

 

移転価格税制におけるリスク減少のために最も有効な手段は、税務当局に対して説得力のある移転価格文書を作成することにつきます。適切に移転価格税制におけるリスクを判断し、法令に準拠して、また必要に応じて移転価格文書を作成する必要があります。

 

以上

 

【初掲載】

ウェブサイト 「イノベーションズアイ」 コラム 「中堅企業にも求められる移転価格税制対応」シリーズ第5回 2017年2月24日

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朝日ネットワークスグループは、日本の朝日税理士法人と連携して、移転価格文書化等、各種税務サービスを提供しております。ご質問・ご相談等ございましたら、当HPの「資料請求・お問い合わせ」よりお気軽にお問い合わせ下さい。

海外子会社に対する役務提供 ~ 第1回:日本の親会社の税務 その1

今回から数回にわたり、日本の企業が海外子会社に業務支援を行う場合の、日本の親会社と海外子会社の課税関係を概観します。今回は、日本における親会社の役務提供料に係る課税関係をみて行きましょう。   IMG_0411   日本の税務上、日本の親会社が海外子会社に対し、経営・財務・業務・事務管理などの業務支援を行う場合において、その活動が海外子会社にとって経済的または商業的価値がある認められるときは、対価を請求すべき役務提供として取り扱われます。   ここで、経営・財務・業務・事務管理とは、以下のような活動です。
①企画または調整、②予算の作成または管理、③会計・税務または法務、④債権の管理または回収、⑤情報通信システムの運用・保守または管理、⑥キャッシュフローまたは支払能力の管理、⑦資金運用または調達、⑧利子率または外国為替レートに係るリスク管理、⑨製造・購買・物流またはマーケティングに係る支援、⑩従業員の雇用・配置または教育、⑪従業員の給与、保険等に関する事務、⑫広告宣伝(⑨に掲げるマーケティングに係る支援を除く) 
  経済的または商業価値があるかどうかは、
◆ 同じ状況にある非関連企業から同様の支援を受けた場合にも子会社は対価を支払うか、または、 ◆ 支援がなかった場合に子会社自ら同じ活動を行う必要があると認められるか
で判断します。次のような場合などには、経済的または商業的価値がないものとされます。   * 親会社が海外子会社に対し、非関連者が海外子会社に対して行う役務の提供または海外子会社が自らのために行う活動と重複する活動を行う場合(ただし、その重複が一時的である場合、リスク低減のために重複活動を行う場合などは除く) *  親会社が株主の地位に基づき自らのために行う次のような活動

(a)親会社が実施する株主総会の開催や株式の発行など、親会社が遵守すべき法令に基づいて行う活動

(b)親会社が金融商品取引法に基づく有価証券報告書等を作成するための活動(ただし、親会社が子会社に対して行う特定の業務に係る企画、技術的助言、日々の経営に関する支援等は該当しない)

それでは、経済的または商業的価値がある業務支援については、どのように役務提供料を決めればよいのでしょうか? ―― 移転価格税制に基づき、原則として、「独立価格比準法と同等の方法」または「原価基準法と同等の方法」で算定する ―― が答えです(移転価格税制や、これらの価格算定方法は、別の機会に説明いたします)。   ただし、親会社の本来の業務に付随した役務提供については、一般的には、かかった総原価の額を役務提供料として請求すれば移転価格税制上の問題にはなりません。ここで言う総原価とは、「直接費+合理的に配賦された一般管理費等間接費」です。利益を上乗せする必要はありません。   では、親会社が請求すべき役務提供料を子会社に請求しなかった場合は、税務調査などでは、“寄附金”として取扱われるのではないか?――― この点に関しましては、次回、ご説明いたします。

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