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海外進出企業の国際税務入門 第8回「移転価格調査とは?」(日本の税制)

独立して会計事務所を経営している知り合いの税理士・会計士が、娘さんにこんなことを言われたそうです。「お父さんの後は継がない。だって、将来、なくなる仕事なのでしょう?」。

 

イギリスのAI(人口知能)研究者が2014年に出した論文では、90%の確率で10年後になくなる仕事に、「簿記、会計、監査の事務員」と「税務申告代行者」があげられています。しかし、私は、税理士・会計士の仕事が将来なくなるとは思いません。確かに、記帳代行等などの単純作業はAIが担えるかもしれません。法律の解釈、適用もある程度はできるでしょう。けれども、その前提として、お客様に寄り添い、相談に乗り、事実認定やアドバイスをするという仕事は決してなくなるものではないと確信するからです。

 

本ブログのテーマである移転価格調査を行う国税当局も税務申告作業などの電子化を推進しています。移転価格文書である、国別報告事項やマスターファイルも、電子申告することが求められています。さて、国税当局の税務調査官の仕事は、10年後にどの程度、AIにとって替わられるのでしょうか?今から楽しみです。

 

移転価格調査は中小企業もターゲット

 

移転価格調査のベースとなる移転価格税制は、「企業とその海外子会社等との取引価格を、現実の取引価格ではなく、独立企業間価格(独立した企業間において通常設定される価格)を用いて、課税所得を計算する制度」です。最近では、中小企業も海外進出が盛んになり、海外子会社との取引も増え、国税当局の移転価格調査の対象となることが少なくありません。国税通則法(国税に関する一般法)が改正され一般の法人税調査の範囲に移転価格調査が加わったこと、大企業の移転価格対策が一巡したことなどが、その増加を後押ししています。

 

移転価格調査とは?

 

企業とその海外子会社等との取引価格である移転価格は、国税当局の税務調査の対象となります。この調査の期間は、1~2年の長期に及ぶのが通常です。これまでは、一般の法人税調査とは別に実施されてきましたが、国税通則法の改正で、原則として、一般の法人税調査において行われることになりました。

 

移転価格調査ではどのような資料提出が求められるか?

 

移転価格調査では、通常、膨大な資料が要求されます。主たるものは、移転価格に関する資料で、海外の子会社との取引内容を記載した書類、使用した独立企業間価格を算定するための書類、その他、移転価格に関する説明資料等があげられます。

 

移転価格文書化制度とは

 

2016年度(平成28年度)の税制改正では、「移転価格文書化制度」が新しく整備され、税務調査において税務調査官が指定する期日(取引規模によって、45日以内、または、60日以内)までに、一定の移転価格に関する説明資料を提出しない場合、税務調査官は、推定課税、または、同業者調査を行うことができるようになりました。推定課税とは、税務調査において、独自に入手した外部情報により算定した結果をあるべき課税金額とみなして更正するもの、同業者調査とは、税務調査官が調査対象企業の同業者に質問し、または、帳簿書類を検査することをいいます。

 

移転価格の調査対象となりやすい企業は?

 

2017年(平成29年)6月に国税庁が公表した「移転価格ガイドブック」では、確定申告書の情報をはじめ、あらゆる資料および情報を収集・分析・検討して移転価格税制上の問題の有無を確認し、海外への所得移転が想定される事案等、移転価格調査の調査必要度が高い事案について、重点的に移転価格調査を実施するとしています。

 

また、調査必要度の判定は、税務申告状況、過去の調査情報、マスコミやその他の公開情報など、様々な情報を活用し、たとえば、以下のような観点から行うとしています。その際、企業と海外子会社等の機能・リスクも勘案しつつ、多角的に検討が行われるとされています。

 

・企業が赤字または低い利益水準となっていないか

・海外子会社等の利益水準が高くなっていないか

・海外子会社等への機能・リスクの移転などの取引形態を変更している一方、それに伴い適切な対価を授受していないことや、軽課税国の海外子会社等に多額の利益剰余金が存在すること等により、海外子会社等に所得が移転していると想定されないか

・海外子会社等に所得を移転させるタックスプランニングが想定されないか

・過去に移転価格課税を受けているにもかかわらず、当事者の利益水準等に変化が見られないなどコンプライアンスに問題が想定されないか

・企業と複数の海外子会社等との間で、連続した取引(連鎖取引)を行い、利益配分状況や海外関連者の機能などが税務申告書上では解明できず、確認を要さないか

 

今すぐ、移転価格文書の作成を

 

もしも貴社の海外子会社との取引が50億円(無形資産は3億円)に達しているのであれば、移転価格文書の一つである「ローカルファイル」の作成にとりかかるべきです。税法改正によって、3月決算の会社であれば、その申告期限である5月末か、申告書の提出を延長している場合は6月までに仕上げる必要があります。取引が50億円に達していなくても、移転価格調査でローカルファイルの提出を求められた場合は、最長でも60日間以内にそれを提出することが求められます。

 

移転価格調査をいつ受けても良いように、税務調査官に対して説得力のある移転価格文書を準備しておくことが必要です。

 

以上

 

*本稿は、日本の朝日税理士法人の提供を受けています。

 【朝日の移転価格コンサルティング】

朝日ネットワークスグループは、日本の朝日税理士法人と連携して、移転価格文書化等の移転価格コンサルティング、及び、各種国際税務サービスを提供しております。ご質問・ご相談等ございましたら、当HPトップページ右上の「お問合わせ」よりお気軽にお問い合わせ下さい。

【国際税務ブログ】海外進出企業の国際税務入門 
第5回「貴社の海外子会社はタックスヘイブン対策税制の対象?」(日本の税務)

株式会社デンソーは、外国子会社合算税制(以下、タックスヘイブン対策税制)に基づき国税当局が行った約12億円の課税処分の取消しを求め、訴えを起こしていましたが、本年(2017年)10月24日、最高裁で主張が認められ、当該課税処分の取消しが確定しました。このケースでは、納税者であるデンソーが勝訴しましたが、税務訴訟における納税者の勝訴割合は、直近の平成26年度は6.8%、ここ2~3年では、7%前後と極めて低い数値になっています。

 

当該税制は、適用された時の課税額の大きさ、平成29年度税制改正での適用判定の複雑化を考えると、海外に子会社を置く企業は、早急に適用の有無の再検討を行う必要があります。

 

 

外国子会社合算税制(タックスヘイブン対策税制)とは?

 

外国子会社合算税制(以下、タックスヘイブン対策税制)とは、日本での課税を回避するために、タックスヘイブン(税金回避地)と呼ばれる法人税率の低い国にシフトした所得を、日本の株主の所得と合算して日本で課税するという制度です。

 

平成29年度税制改正前は、租税負担割合が20%未満(これをトリガー税率という)の国がタックスヘイブン国とされていました。しかし、経済実態のないペーパーカンパニー等が租税負担割合20%以上であるというだけで同税制の適用を免除することを防止するため、改正法では、この20%のトリガー税率は廃止されました。ただし、租税負担割合が30%以上であれば同税制の適用が免除されます。

 

なお、この租税負担割合は海外子会社の所在国の法定税率ではなく、海外子会社の所得に対して課される租税額の割合により判定しますので、注意が必要です。

 

 

 海外子会社はどのような場合にタックスヘイブン対策税制の適用対象となるか?(下図参照)

 

 

① 海外子会社が適用対象となる「外国関係会社」にあたるか?

 

対象となる外国関係会社とは、外国法人のうち、内国法人、居住者等が合計で50%超を直接および間接に保有している法人を言います。ただし、改正法では、50%以下でも、実質支配関係があるときには外国関係会社に含められますので、注意が必要です。

 

② 当該税制の適用対象となる内国法人は?

 

この税制の適用対象となるのは、当該外国関係会社の10%以上の株式等を直接および間接に保有する株主である内国法人及び居住者です。

 

③ 改正法では「特定外国関係会社」か否かに分けて判定する

 

改正法では、以下の「特定外国関係会社」であるか否かで、課税関係が変わってきます。

特定外国関係会社

     (i) ペーパーカンパニー(以下の要件のいずれも満たさない外国関係会社)

           ・主たる事業を行うに必要と認められる事務所等の固定施設を有していること。

           ・本店所在地国において事業の管理、支配および運営を自ら行っていること

     (ii)キャッシュボックス法人(受動的所得の割合が高い外国関係会社)

     (iii)ブラックリスト国・地域所在法人(財務大臣が指定する国または地域に本店等を有する外国関係会社)

  *受動的所得とは、利子、配当、有価証券の貸付の対価等、自ら活動をしなくても得られる所得で、旧制度の「資産性所得」より範囲が広くなっています。

 【特定外国関係会社である場合】

ペーパーカンパニー等の特定外国関係会社である場合、その所得のすべてが合算課税の対象となり(会社単位の合算課税)、株式保有割合に応じて内国法人等の課税所得として取り込むことになります(ただし、租税負担割合が30%以上である場合は、合算課税は免除)。

 

【特定外国関係会社でない場合】

ペーパーカンパニー等の特定外国関係会社でない場合は、さらに、当該外国関係会社の租税負担割合が20%以上30%未満であるかどうかに分けて検討します。

<租税負担割合が20%以上30%未満>

合算課税の対象とはなりません。

<租税負担割合が20%未満>

以下の経済活動基準のすべてを満たすがどうかに分けて判定します。

          経済活動基準

           ①事業基準、②実態基準、③管理支配基準、④非関連者基準/所在地国基準

         (経済活動基準のすべてを満たす場合)

          当該外国関係会社の会社単位の合算課税の対象とはなりません。

          ただし、当該外国関係会社の受動的所得は合算課税の

 

          (経済活動基準のいずれかを満たさない場合)

            当該外国関係会社の会社単位の合算課税の対象となります。

 

 

新・タックスヘイブン税制の適用時期

 

改正法は外国関係会社の平成30年4月1日以後に開始する事業年度から適用が開始されます。改正法では、以前と比べ、ペーパーカンパニーであるか否かの判定、経済活動基準の判定などがあり、同税制適用の有無の検討過程が複雑です。加えて、税務調査で要請があれば、ペーパーカンパニー等に該当しないことや、経済活動基準を満たすことを証明する書類の提出が必要となり、期限までに提出しない場合は、ペーパーカンパニー等に該当するもの、または、経済活動基準を満たしていないものと推定されます。よって、適用判定を早目に行い、適用がある場合には、早急に文書化を行うことが必要と考えます。

 

以上

 

 

【初掲載】

ウェブサイト 「イノベーションズアイ」 コラム 「国際税務」シリーズ 第5回 「貴社の海外子会社はタックスヘイブン対策税制の対象?」 2017年11月3日 (本ブログは、日本の朝日税理士法人から提供を受けています。)

【お問い合わせ】

朝日ネットワークスグループは、日本の朝日税理士法人と連携して、タックスヘイブン対策税制に係るコンサルティング、移転価格文書化支援等、各種国際税務サービスを提供しております。ご質問・ご相談等ございましたら、当HPトップページ右上の「お問合わせ」よりお気軽にお問い合わせ下さい。

 

 

 

移転価格税制の基礎 (7)
「国税庁 移転価格ガイドブック公表~2017年7月より企業訪問開始」
(日本の税制)

2017年(平成29年)6月9日、国税庁が「移転価格ガイドブック~自発的な税務コンプライアンスの維持・向上に向けて~」を公表しました。

 

移転価格文書化制度においては、2017年(平成29年)4月1日以後に開始する事業年度より、「ローカルファイル」を確定申告書の提出期限までに作成・保存するという、「同時文書化」が義務化されています(取引規模による免除規定あり)。

 

このガイドブックには、同時文書化対応ガイド(ローカルファイルの作成サンプル)が掲載されていますので、移転価格文書化を行う際の実務の手引きとして役立ちます。

 

また、「ガイドブック」としながらも、本年(平成29年)7月に、国税局に同時文書化対象取引に関する「相談窓口」が開設されること、及び、同7月より、税務調査官が、移転価格文書化制度に関する指導、助言のために「企業訪問」を開始することの告知も行われています。

 

◆移転価格ガイドブックの内容

移転価格ガイドブックの項目は以下のとおりです。

  1.   移転価格に関する国税庁の取組方針
  2.  移転価格税制の適用におけるポイント
  3. 同時文書化対応ガイド(ローカルファイルの作成サンプル)

 

◆相談窓口の開設(2017年(平成29年)7月より)

ガイドブックでは、同時文書化対象取引(年間受払合計50億円以上(無形資産の場合は3億円以上)の海外子会社等との取引)に関する個別照会に対応する相談窓口を、東京・大阪など全国12か所の国税局・事務所に開設するとしています。

 

個別照会の対象となる照会には一定の範囲が設けられていますが、文書の作成過程で疑問が生じる場合の、一つの解決手段となるでしょう。

 

◆移転価格文書化制度に関する指導、助言等のための企業訪問の実施(2017年(平成29年)7月より)

ガイドブックでは、国税調査官が同時文書化義務の対象見込みの企業(海外子会社等との取引が年間50億円以上(無形資産の場合は3億円以上)あることが見込まれる企業等)を訪問するとしています(訪問前に事前に電話で日時等の連絡あり)。

 

同ガイドブックは、企業訪問は「特定の納税義務者の課税標準等又は税額等を認定する」目的で行われる税務調査ではないとしています。それでも、移転価格税制全般についての取組状況や同時文書化対象取引の概要の聴取、ローカルファイルの記載内容の確認・ヒアリングが行われますので、企業担当者の応対の負担は小さくありません。けれども、移転価格調査での着眼点や想定される指摘事項等の助言が必要に応じてなされるなど、文書化を推し進めて行く上で有益なものです。よって、企業訪問は文書化推進の良い機会ととらえて、積極的に活用することが望まれます。

 

なお、この企業訪問でローカルファイルの記載内容につき指導を受けた事項について、改めて検討するよう勧告されます。また、後日の移転価格調査を含む税務調査やローカルファイルの作成状況等を確認するために企業を訪問する際に、指導、助言等を行った事項の対応状況について質問確認を行うことがあるとされていますので、注意が必要です。

 

◆今後の対応

海外子会社等との取引の年間受払合計が50億円以上(無形資産の場合は3億円以上)の企業は、企業訪問を「プレ税務調査」と位置づけ、それが税務調査の呼び水とならないよう同時文書化を推進することが肝要です。

 

海外子会社等との取引の年間受払合計が50億円未満、かつ、無形資産取引が3億円未満の企業は、企業訪問の対象とはなっていません。けれども、同ガイドブックを参考に文書化を行い、税務調査で移転価格関係書類の提示・提出要求があった場合に即時に対応できる体制を作っておくことが望まれます。

 

以上

 

【初掲載】

企業情報ウェブサイト 「イノベーションズアイ」 コラム 「中堅企業にも求められる移転価格税制対応」シリーズ」第13回 2017年6月30日

【お問い合わせ】

朝日ネットワークスグループは、日本の朝日税理士法人と連携して、移転価格文書化等、各種税務サービスを提供しております。ご質問・ご相談等ございましたら、当HPトップページの「お問い合わせ」よりお気軽にお問い合わせ下さい。

移転価格税制の基礎 (6) 移転価格文書化(ローカルファイル)の記載内容は?

平成28年10月のことになりますが、国税庁が「国際戦略トータルプラン」を公表しました。これは、国際課税の取組の現状と今後の方向を取りまとめたもので、同庁が国際課税への取組みを重要な課題と位置付けていることがうかがえます。トータルプランの主な内容は、情報リソースの充実、調査マンパワーの充実、及び、グローバルネットワークの強化です。このような国税庁の取組みを考えれば、海外取引を行う企業においては、移転価格文書化などのコンプライアンス遵守の必要性が高まっていると言えるでしょう。

 

今回は、海外子会社等との国外関連取引を行った企業に作成が義務付けられているローカルファイルの記載内容について見て行きます。

 

◆ローカルファイルとは?

ローカルファイルの税法上の正式名称は、「独立企業間価格算定に必要と認められる書類」です。内容は、「海外子会社との取引の内容を記載した書類」と、「海外子会社との取引に係る独立企業間価格を算定するための書類」とに大きく分けられます。

 

◆海外子会社との取引内容を記載した書類

  1. 海外子会社との取引に係る資産及び役務の内容
  2. 海外子会社との取引に係る法人及び国外関連者の機能及びリスク
  3. 海外子会社との取引において、法人又は国外関連者が使用した無形資産
  4. 国外関連取引に係る契約書等
  5. 国外関連取引における取引価格の設定、事前確認等の状況
  6. 国外関連取引に係る損益の切出し
  7. 国外関連取引に係る市場の状況
  8. 法人、及び、国外関連者の事業内容、事業方針及び組織の系統
  9. 国外関連取引と密接に関連する他の取引

 

◆海外子会社との取引に係る独立企業間価格を算定するための書類

  1. 選定した独立企業間価格の算定方法及び選定理由
  2. 国外関連取引に係る比較対象取引の選定
  3. 利益分割法を用いた場合の計算
  4. 複数取引を一の取引とした場合の合理性
  5. 比較対象取引等についての差異の調整

 

上記にあげた書類に関しては、平成28年6月に国税庁より例示集が公表されています。そこでは、各書類の説明と必要な情報の例、準備する書類などが掲載されていますので、参考にして下さい。

 

◆適用時期と提出期限

ローカルファイルは、平成29年4月1日以後に開始する事業年度より作成が義務付けられます。また、海外子会社等との前期の取引金額(受払合計)が50億円以上(ロイヤルティなど無形資産取引の場合は3億円以上)の場合には、確定申告書の提出期限までに作成(これを同時文書化といいます)しなければなりません。さらに、税務調査において提示または提出を求められた場合、税法で定める一定の期日までに提示または提出がない場合は、『推定課税』及び『同業者調査』の対象となりますので注意が必要です。

 

以上

 

【初掲載】

企業情報ウェブサイト 「イノベーションズアイ」 コラム 「中堅企業にも求められる移転価格税制対応」シリーズ第12回 2017年6月16日

【お問い合わせ】

朝日ネットワークスグループは、日本の朝日税理士法人と連携して、移転価格文書化等、各種税務サービスを提供しております。ご質問・ご相談等ございましたら、当HPトップページの「お問い合わせ」よりお気軽にお問い合わせ下さい。

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