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2017年12月

移転価格税制の基礎 (5)~「移転価格文書化義務違反のペナルティは?」

日経新聞などの人事欄を見ると、コンプライアンス(法令順守)推進室長やコンプライアンス統括室長などの役職がよく目に留まります。コンプライアンス違反が引き起こす様々なペナルティは企業にとって屋台骨をゆるがしかねない経営リスクの1つです。

 

脱税などの法人税法違反は究極のコンプライアンス義務違反ですが、移転価格文書化義務を怠るなど、制度を知らなかったために税法で定められた書類の作成を行わなかった場合も、もちろんコンプライアンス義務違反になります。海外子会社等と取引のある企業の皆様には、是非、制度を理解し、以下の推定課税や同業者調査を受けないよう、ご注意いただきたいと思います。

 

推定課税と同業者調査とは?

平成28年度の税制改正においては、税務調査において調査官が指定する期日(取引規模によって、45日以内、または、60日以内)までに、「ローカルファイル」と言う、一定の移転価格に関する説明資料を提出しない場合、調査官は、推定課税、または、同業者調査を行えることが規定されました。

 

推定課税とは、税務調査官が独自に入手した外部の情報に基づき計算した結果をあるべき課税金額とみなして所得の更正を行うものです。つまり、調査官が同業他社の使用している同様な取引の価格や利益率を用いて、貴社のあるべき課税所得を推定するというものです。そのためには、同業他社の帳簿書類などの情報にアクセスする必要がありますが、調査官には同業他者への質問検査権が与えられ、同業者調査が可能とされているのです。

 

なお、国税庁の事務運営指針によれば、同業者調査が実施された場合に、比較の対象とした取引を選定するために用いた条件や、取引の内容などを納税者側に説明するものとされています。ただし、その際、守秘義務規定に留意せよとされていますので、比べた企業名等は明らかにされません。よって、納税者は、調査官の課税の根拠を十分に知ることができず、的確な反論もできないまま、所得を更正され、税金の追徴を受ける可能性があるのです。

 

推定課税・同業者調査回避のためのローカルファイル作成・提出

上述のように、ローカルファイル等の移転価格文書を指定期日までに作成・提出しなければ推定課税や同業者調査の対象となりますので、当該、推定課税や同業者調査はローカルファイル作成・提出義務違反のペナルティということができます。しかし、ポジティブに考えるならば、推定課税や同業者調査の条件が明確化され、移転価格税制に係る納税者の予見可能性が高まったということもできます。

 

コンプライアンス遵守に努め、推定課税や同業者調査を回避することによって、課税リスクを最小化することが重要です。

 

以上

 

【初掲載】

企業情報ウェブサイト 「イノベーションズアイ」 コラム 中堅企業にも求められる移転価格税制対応」シリーズ第11回 2017年5月269日

【お問い合わせ】

朝日ネットワークスグループは、日本の朝日税理士法人と連携して、移転価格文書化等、各種税務サービスを提供しております。ご質問・ご相談等ございましたら、当HPの「資料請求・お問い合わせ」よりお気軽にお問い合わせ下さい。

移転価格税制の基礎 (4) ~Arm’s Length Price ~ 腕の長さの価格とは?
(日本の税法)

移転価格税制では、海外の関連企業(国外関連者)との取引が独立企業間価格(Arm’s Length Price:ALP)で行われたか否かが問題となります。Arm’s Lengthを直訳すると、「腕の長さ」という面白い表現ですが、これは、「一定の距離をおいた」、つまり、「関連者間でない」という意味があります。

 

税務上、ALPとは、国外関連取引と同様の状況のもとで、関連者でない独立第三者間において同種の取引が行われた場合に成立する価格をいいます。ひとことで言えば、“経済合理性のある取引関係に基づく適正な価格”です。

 

企業がALPと異なる価格で国外関連取引を行った結果、所得が国外関連者に移転している場合は、税務当局はその取引がALPで行われたものとみなして課税することができます。

 

ALPの算定方法は?

ALPの算定方法は、商品・製品などの棚卸資産の売買取引とそれ以外の取引の2つの取引に分けて定められています。ここでは、棚卸資産の売買取引の場合のALPの算定方法をみていきましょう。

 

算定方法としては、基本3法、基本3法に準ずる方法、その他政令で定める方法があります。以前は基本3法が優先して適用されていましたが、現在は取引の国外関連者との取引の内容やそれぞれの会社が果たす機能等を考慮して、もっとも適切な方法を選定するという、「ベストメソッドルール」が使われています。ただし、国税当局は、下記の独立価格比準法が最善で、再販売価格基準法と原価基準法が次善の算定方法であるとしていますので、注意が必要です。

 

○独立企業間価格(ALP)の算定方法(棚卸資産の場合)

【基本三法】

①    独立価格比準法(CUP法)

②    再販売価格基準法(RP法)

③       原価基準法(CP法)

【基本三法に準ずる方法】

①       独立価格比準法に準ずる方法

②       再販売価格基準法に準ずる方法

③       原価基準法に準ずる方法

【その他政令で定める方法】

①       比較利益分割法

②       寄与度利益分割法

③       残余利益分割法

④       取引単位営業利益法

⑤       ①から④までの方法に準ずる方法

 

基本3法のうち、独立価格比準法は価格に着目する方法、再販売価格基準法と原価基準法は売上総利益に着目する方法です。その他政令で定める方法として、売上総利益または営業利益を分割する3種の利益分割法と、営業利益に着目する取引単位営業利益法(TNMM)が定められています。

 

ALPの算定方法は、かつては基本3法が実務において用いられていましたが、企業取引が複雑化、グループ間取引の増加、またはデータベースの内容の拡充などの環境変化により、現在では、営業利益に着目し、データベースを活用する取引単位営業利益法などが主流となっています。

 

ALP算定のための書類をローカルファイルに

ALPを算定するために必要と認められる書類(ローカルファイル)は、原則として確定申告書の提出期限までに作成し、保存する必要があります(これを同時文書化義務といいます)。前回のブログで述べたとおり、1つの国外関連者との取引について、その前期の取引金額が50億円未満である場合には、同時文書化義務は免除されます(注:あくまでも、作成・保存義務はあり)。それでも、税務調査で60日以内の指定日までにローカルファイルを提出しなかった場合には、推定課税を受ける可能性があることはすでに述べたとおりです。

 

国外関連者との間に取引がある会社は、ALPを算定するための情報を文書化して、税務調査があった場合にすみやかに対応できるよう準備しておくことが大切です。

 

以上

 

【初掲載】

企業情報ウェブサイト 「イノベーションズアイ」 コラム 「中堅企業にも求められる移転価格税制対応」シリーズ」第10回 2017年5月19日

【お問い合わせ】

朝日ネットワークスグループは、日本の朝日税理士法人と連携して、移転価格文書化等、各種税務サービスを提供しております。ご質問・ご相談等ございましたら、当HPの「資料請求・お問い合わせ」よりお気軽にお問い合わせ下さい。

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