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2014年12月

日本で海外電子書籍にも消費税が課せられる!
(OECDのBEPS行動計画1「電子経済の課税上の課題への対処」関連)

2015年 の税制改正においては、海外から日本にインターネットで配信される電子書籍・音楽等のコンテンツに消費税を課す方向で議論が進められています。

 

現在、米国アマゾンや楽天「kobo」など、海外にサーバーを置く事業者からのデジタルコンテンツの販売については、消費税が課税されません。ゆえに公平な競争が阻害されているとして、日本の出版、音楽、ネット業界などから消費税法改正の要望があがっていました。

IMG_0168タイ2(タイにて)

 

これに対し、自民党の税制調査会長も「内外の公平という問題と同時に、課税漏れという問題がある」と指摘し、来年(2015年)10月の消費再増税に「(海外デジタルコンテンツへの消費税課税を)間に合わせるようにしたい」と語っています(2014年10月18 日、日経電子版)。自民党税制調査会は政府税制調査会が本年6月に公表した「国境を越えた役務の提供に対する消費税について」という制度案を土台に、年末までに具体的な制度案作る予定です。

 

当該政府税調の制度案では、まず、デジタルコンテンツの提供(電子書籍や音楽の配信等)については、消費税法上、「資産の譲渡・貸付け」ではなく、「役務の提供」であることを明確にしています。その上で、国外事業者が行う国内外に亘る役務の提供(電子書籍等が該当)など、その役務の提供が行われた場所が明らかでないものについては、役務の提供を行う者の住所でなく、受ける者の住所で国内か国外か判定することとしています(国内は課税、国外は不課税)。

 

つまり、デジタルコンテンツの提供を行う者の住所が海外にあっても、提供を受けるものの住所が日本にある場合には、消費税が課税されることになります。

 

  安倍首相は、先の衆院選勝利を受けた記者会見で、来年度の自民党税制改正大綱について「異例だが、年内中にとりまとめを支持したい」と表明していますので、上記、消費税の改正案が同大綱に盛り込まれるのか、注目に値します。

 

さて、このような海外からのデジタルコンテンツ等の役務提供など電子商取引については、顧客の所在国に販売店等の物理的拠点を有さずに行えることから、消費税だけでなく法人税の課税が十分に行えないという課題があります。

 

このような課題への対処は一国で行うことは困難であり、国際的な仕組み作りが必要です。これに関して、経済協力開発機構(OECD)/G20では議論が重ねられ、本年9月16日公表の第一次BEPS提言の中で、「行動計画1:電子経済の課税上の課題への対処」に係る報告書の形で発表がなされています。

 

同報告書ではこの課題に関して勧告は行われませんでしたが、以下のような、対応策の4つのオプションが提示されました。

1.外国法人の事業所得については、国内に恒久的施設(PE)がある場合に課税する取扱いであるところ、PEの考え方の見直し。

2.企業が他国の顧客のデータの大量の収集から経済的利益を得ている場合のそのデータの価値に着目した課税。

3.海外からの電子書籍・音楽配信等の役務提供に対する対価の支払いについて、これらの電子商取引の決済を行う金融機関等への源泉徴収。

4.役務の提供を受ける者の所在地で課税(仕向地主義)することが望ましいことから、消費者向け取引(B2C)についての海外事業者からの消費税の徴収の在り方。

 

OECD/G20は、上記オプションについて、中立性、効率性等の観点から評価することとしており、他のBEPS行動計画の検討も踏まえて、各オプションの技術的詳細や影響について、2015年末まで引き続き議論を継続することになっています。

 

以上

日本でも富裕層の保有株式への出国税を検討
OECDのBEPS行動計画6「租税条約の濫用防止」勧告を踏まえて(日本の税法)

平成27年度の日本の税制改正では、一定規模の有価証券を保有する富裕層を対象に、保有株式への「出国税(Exit Tax)」を課すことが検討されることになりました。これは、財務省が10月21日の政府税制調査会第5回基礎問題小委員会で明らかにした方針です。

 

  「出国税」は、日本の個人富裕層が日本を出国して非居住者となる際に、保有する株式等の含み益に課税するというものです。すなわち、未実現のキャピタルゲインが課税されます。アメリカ、ドイツ、フランス、カナダ、イギリスなどでは、すでに導入されています。

 

一般に日本の締結している租税条約上、株式等の含み益については株式等を売却した者が居住している国に課税権があるとされています。ここで、日本ではキャピタルゲインには現行では20.315%(復興特別所得税を含む)の税金がかかりますが、シンガポール、香港、ニュージーランド、スイスなどのキャピタルゲインの非課税国に移住することによって、この税負担を回避するという節税スキームが生まれてくるのです。

IMG_0049タイ1(タイ)

当該、「出国税」については、以下のような問題点・疑問点が浮かんできます。

  • 含み益への課税のため、納税資金がなかったり、出国後に株式等を売却せずに日本に帰国したりすることも考えられる。よって、延納や納税猶予などの措置が必要ではないか?
  • 出国先は“非課税国”に限定されるのか?
  • 出国先が“非課税国”だが、その後、キャピタルゲイン課税国に移住し、株式等の譲渡益が課税された場合、二重課税は排除できるのか?
  • 二重課税の排除は、課税のタイミングが同時でないと基本的には排除できないが、出国先において譲渡した際、その取得原価は出国時に課税された時の時価とみなすような措置が必要ではないか?

 ところで、「出国税」創設の検討は、本年9月16日に発表されたOECDの第1次BEPS提言のうち、行動計画6「租税条約の濫用防止」に係る勧告を踏まえています。

*BEPSとは、Base Erosion and Profit Shiftingの略(日本語では、「税源浸食と利益移転」)で、多国籍企業が各国の税制の違いや租税条約等を利用して所得を軽課税国・無税国に移転し、グローバルに租税負担を免れていることを指します。

条約漁り(Treaty Shopping)(第3国の居住者が不当に条約の特典を得ようとすること)をはじめとした租税条約の濫用は、BEPSのもっとも重要な原因の1つとなっています。   今回公表されたOECDの報告書では、以下のような勧告がなされています。

  1. 租税条約の前文に、租税条約は条約漁りを通じたものを含め、二重非課税の創出や租税回避・脱税による税負担軽減を目的とするものでないことを明記する。
  2.  租税条約に次のいずれかの組み合わせ等による濫用防止規定を盛り込むこと。

① 特典制限規定(Limitation on Benefit: LOB)と主要目的テスト(Principal Purpose Test: PPT)の両方

② PPTのみ

③ LOB及び租税条約上または国内法上の導管取引防止規定(限定PPT)

あわせて、租税回避防止のための国内法が条約との関係で確実に適用できるよう、適切な措置を講じることを勧告しています。この勧告を踏まえて、上記の「出国税」創設が検討されています。我々としては、OECDの今後のBEPS報告書における勧告にも注意しながら、当面は年末の税制改正大綱の取りまとめに向けた税制調査会の「出国税」創設についての議論の推移を注視する必要があるでしょう。

 

以上

OECD多国間協定で課税漏れ防止へ!
(BEPS行動計画15「多国間協定の開発」)

2014年10月29日付の日本経済新聞朝刊では、以下の記事(抜粋)が掲載されました。

課税漏れ 多国間で防止-2国間協定に限界 OECD、2016年にも数十カ国連携 日米など先進34カ国で構成する経済協力開発機構(OECD)は多国籍企業への課税漏れを防ぐため、国際協調の新たな枠組みを作る。 2016年にも数十カ国が参加する多国間協定を結び、統一した国際課税ルールをすぐに反映できる体制を整える。現在は「日米租税条約*1」など2国間の協定しかなく、3つ以上の国を舞台にした税逃れに対応しにくい。企業のグローバル化の進展に対応し、政府側も多国間連携を進め、行き過ぎた節税策を封じる。

*1: 租税条約とは、「国と国との間で結ばれる租税に関する合意」を言います。

 これは、本年9月16日に発表された、OECD加盟国とG20(20カ国・地域を構成する中国やインドなどの新興国)の共同プロジェクトであるBEPS*2行動計画15「多国間協定の開発」(原題:「Developing a Multilateral Instrument to Modify Bilateral Tax Treaties」)に係る勧告(BEPS第1次提言)についての記事です。

*2: BEPSとは、Base Erosion and Profit Shiftingの略(日本語では、「税源浸食と利益移転」)で、多国籍企業が各国の税制の違いや租税条約等を利用して所得を軽課税国・無税国に移転し、グローバルに租税負担を免れていることを指します。

タイ・パタヤ (タイ/パタヤ)

このOECD/G20 の勧告の主旨は、「BEPS対策の措置を実施するためには租税条約の改正が必要なものがあるが、3000以上もある2国間条約を個々に改正すれば、膨大な時間とリソースが必要である。そこで、多国間協定により多数の租税条約を一挙に改正し、BEPS対策措置を効率的に実施していくべきである。」というものです。

 

OECD/G20は、「専門家グループによる議論の結果、多国間協定は望ましいうえ、実現可能である。」と結論づけています。今後は、2015年初頭に多国間協定の正式交渉のための国際会議を招集する予定です。

 

この交渉が成功し多国間協定ができれば、多国籍企業の各国の税制の違いや租税条約等を利用した租税回避策へ効率的に対応することが可能となるものと思われます。

 

しかし、多国間の交渉は国と国との利害が対立しがちであり、合意に達することは容易ではありません。OECDが95年に交渉を開始した多国間投資協定が、参加をとりやめる国が出てきて98年に交渉とりやめになった例もあります。   OECD/G20各国が行き過ぎた節税策を封じるため、立場の違いを埋め、どこまで連携できるか、今後の行方が注目されます。

 

以上

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