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移転価格税制の基礎(2)知っておきたい移転価格税制(日本の税制)

我々の周りを見てみると、複数国にまたがって、世界的なレベルで事業を展開するいわゆる「多国籍企業」が少なくありません。多国籍企業においては、親子会社間、兄弟会社間における取引がなされていますが、これら親会社と子会社等(国外関連者といいます)との間の財・サービスの取引に付される価格を移転価格と言います。

移転価格税制の必要性

税制は国家によって決められており、税率は国ごとに異なります。仮にある企業が税率の異なる二つの国で営業している場合、企業はどのような行動をとるでしょうか?税金をコストだと考える企業であれば、トータルの税金を低く抑えようとする結果、両国間での移転価格を操作して、意識的に税率の低い国に利益を残そうとするかもしれません。

国家の財政は、国の収入である税金によって成立しています。本来であれば「国家にもたらされるべき税金」が、前述の企業行動によって、結果として国外に流出してしまうと、国家の財政は破綻しかねません。このような国外関連者との取引を通じた、所得の不公正な海外移転を防止するために、日本を含めた多くの国では移転価格税制が設けられています。

移転価格税制とは

移転価格税制とは、国内企業が国外関連者との取引を行う結果、独立した企業間で通常設定される取引価格(独立企業間価格)で行う取引より利益が減少する場合に、その取引を独立企業間価格で行われたものとみなして当該企業の所得を計算し、課税する制度を言います。日本では昭和61年に導入され、幾度かの改正を経て、平成28年には日本も加盟する国際機関であるOECD(経済協力開発機構)のBEPSプロジェクトの勧告を踏まえた移転価格文書化制度に関する改正がありました。

BEPSプロジェクトは、国際課税のルールを明確にするためのプロジェクトです。リーマンショック後に、各国の財政状況は悪化し、国民に重い税負担が求められるようになりました。その中で多国籍企業の中には、ローカルな税制の隙間や抜け穴を利用した節税対策を実行して、税負担を軽減しているという問題が次々と発覚しました。同プロジェクトは、このような多国籍企業の租税回避行為を防止することを主な目的としています。

平成27年9月に、このプロジェクトの最終報告が取りまとめられ、G20サミットで報告されました。この最終報告は法的拘束力を持っていないものの、日本をはじめ、OECD加盟国、G20参加国では、順次導入を進めています。

移転価格税制の執行状況に目を向けると、近年、日本を含む各国税務当局、特に、中国、インド、東南アジアの国々などの新興国は、移転価格に係わる税務調査に力を入れ、多額の税金の追徴を行うことも少なくありません。今や、移転価格税制の知識は、グローバルに事業を展開する企業にとって欠かせないものと言っても過言ではないでしょう。

― 以上 -

 

【初掲載】

企業情報ウェブサイト 「イノベーションズアイ」 コラム 「中堅企業にも求められる移転価格税制対応」シリーズ」第8回 2017年4月7日

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朝日ネットワークスグループは、日本の朝日税理士法人と連携して、移転価格文書化等、各種税務サービスを提供しております。ご質問・ご相談等ございましたら、当HPの「資料請求・お問い合わせ」よりお気軽にお問い合わせ下さい。

移転価格税制の基礎(1)はじめに(日本の税制)

世界の名だたる要人の租税回避行為をあからさまにした「パナマ文書」が、2016年4月に波紋を呼び、これに関して、「BEPS」という言葉が脚光をあびることになりました。  

 

BEPSとは

BEPSとは、Base Erosion and Profit Shifting の略(日本語訳は「税源浸食と利益移転」)で、多国籍企業等が各国の税制の違いや租税条約等を利用して所得を軽課税国・無税国に移転し、グローバルに租税負担を免れていることを言います。このBEPSに対応するために、OECD(経済協力開発機構)とG20は、「BEPSプロジェクト」と銘打って、パナマ文書発覚以前の2012年より、15項目の「行動」に関する加盟国への勧告を行っています。

 

BEPS行動13を受けた平成28年税制改正

15項目のうち移転価格に関する「行動」は3項目。そのうち行動13「移転価格関連文書化の再検討」(現在では、「多国籍企業の企業情報の文書化」と改名)に関し、OECD/G20は、多国籍企業がグループ全体の財務情報や事業情報等を、「国別報告書(日本の税制では、「国別報告事項」)」、「マスターファイル」、「ローカルファイル」と呼ばれる共通様式に従って各税務当局に提供することを加盟各国に要請しました。

 

これを受けて、日本では、平成28年度税制改正において、上記3つの文書が導入、または、整備されました。各国においても同様の税制改正が行われています。これら3つの文書から、各国の税務当局はグローバルな移転価格関連情報を広範に取得することが可能になります。

 

かつては、移転価格調査と言えば、主に大規模な上場企業に対して行われ、新聞紙上を賑わして来ました。しかし、近年では、調査対象は中堅企業にも及んでいます。今後は大規模な多国籍企業のみならず、グローバルにビジネスを展開する中堅企業も、移転価格文書化を含めた税務コンプライアンスを遵守し、移転価格調査に備えることが、重要な課題と言えるでしょう。

 

移転価格税制に係る経営リスクの回避

そこで、これから9回にわたって、移転価格税制の基礎を解説いたします。移転価格の算定方法、「比較対象取引」の意味、税務当局の調査の執行状況、平成28年度税制改正で再整備された同時文書化義務等のコンプライアンス制度についてご理解いただき、経営リスクの1つである移転価格税制に係わるリスクを回避していただきたいと思います。

 

以上

 

【初掲載】

企業情報ウェブサイト 「イノベーションズアイ」 コラム 「中堅企業にも求められる移転価格税制対応」シリーズ」第7回 2017年3月24日

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移転価格税制と業績管理

今回は、移転価格税制と業績管理の関係を見て行きます。移転価格税制では、「独立企業間価格」を使うことが求められますが、これが企業グループの業績管理上の取引価格と異なるときはどのように対処すれば良いのでしょうか?

業績管理の目的から決定される価格とは?

 

企業グループは、その利益を極大化することが至上命題です。その達成のために、グループ内のそれぞれの企業の業績管理が行われます。単体企業の業績管理の基準はグループによってそれぞれ異なりますが、例えば、売上高、利益、営業キャッシュ・フロー、戦略達成への貢献度、グループ内部への効率的な資源配分などといった基準が用いられます。

 

単体企業に海外グループ会社との損益取引が存在する場合、取引価格によって当該単体企業の業績が左右されるため、そのモチベーションの向上などを目的として、グループ内の取引価格を政策的に決定する例が多く見受けられます。

 

一方、移転価格税制では、海外取引の価格は「独立企業間価格」であることが求められます。業績管理の目的から決定される取引価格と独立企業間価格が異なる場合、その調整が問題となります。

 

価格が異なる場合の対処方法

 

業績管理目的から決定される価格を利用する場合、その価格が「独立企業間価格」として認められるかどうかを、まずは検討する必要があります。そして、それらが異なる場合、企業グループが業績評価の基準を変えて取引価格を「独立企業間価格」に変更するのか、もしくは独自の取引価格を用いたまま、移転価格税制は税務調整によって対応するという2つの手法が考えられます。

 

ただ「独立企業間価格」は必ずしも一つの方法により求められる単一の価格ではありません。現行の取引価格が「独立企業間価格」として認められないと判断されて価格を変更する場合でも、どこまで変更すればそれとして認められるのかは、取引の状況に照らして綿密に検討する必要があります。

 

また「独立企業間価格」とは異なる独自の取引価格を用いる場合、税金の計算上、調整を行わないと、日本と取引相手の海外グループ会社所在国との間で二重課税が発生するリスクがありますので、それについての検討も必要になります。

 

海外にグループ会社を設立してビジネスを展開していく上では、様々なリスクがつきまとい、移転価格税制に係るリスクもその一つです。当該税制を理解して、そのリスクを回避することは、グループ利益を極大化のための必要条件です。

 

以上

 

【初掲載】

企業情報サイト 「イノベーションズアイ」 コラム 「中小企業にも求められる移転価格税制対応」 第4回 (2017年1月23日)

(弊社関連会社 朝日税理士法人執筆)

 

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トップマネジメントがリードすべき移転価格税制対応とは

皆様は、「移転価格税制への対応」は、経理・税務部門の課題と位置づけておられるのではないでしょうか?確かに、移転価格税制に基づき課税所得を正しく計算する役割を担う当該部門は、多くの企業で移転価格税制の所轄部門となっています。しかし、海外子会社等との取引に係る取引価格(移転価格)は事業・営業部門の事業戦略に基づいて設定され、最終的にトップマネジメントが承認を下すものです。よって、移転価格税制への対応はトップマネジメントの関与が必要になってきます。

 

利益に直結する移転価格

日本の移転価格税制は、日本の企業が海外子会社等と取引を行う場合に、実際の取引価格が税制に基づく「独立企業間価格」と異なり、日本での所得が減少する場合に適用されます。その場合、企業は自主的に所得の減少額を計算して、税金を納める必要があります。放置しておき税務調査で指摘があった場合は、追徴税プラス加算税が課されます。

 

ここで注意すべきは、自主的であろうと、税務調査での指摘であろうと、移転価格税制による納税が発生した場合、グループ全体では、同じ所得に対して海外でも税金の支払い、すなわち、二重課税が発生しているということです(「相互協議」という手続きにより相手国の税務当局から税金を還付してもらい二重課税を回避する道もありますが、特に新興国では応じないケースが多いのが実情です)。

 

とりわけ、税務調査で移転価格税制による所得の計上漏れが指摘された場合、過去にさかのぼってそれが更正されるため、通常、追徴税額は多額となります。税金は利益に直接的に影響を与えますので、これはもはや経理・税務部門だけの問題ではなく、企画・営業・購買・知的財産・海外部門など、全社にまたがって対策を講じるべき問題と言えるでしょう。したがって、移転価格税制に係るコンプライアンスを遵守するためには、トップマネジメントのリーダーシップが必要となります。

 

グローバルで統一された移転価格設定ポリシーの必要性

日本企業と海外関連者との取引は国際間の取引ですので、移転価格税制の適用は2か国以上で問題となります。ここで、日本と外国の間に取引がある場合、外国の側のみで現地の税務当局に提出するための文書化を行っているのに、日本の親会社にはそれがまったく知らされていなかったという例を時々見かけます。しかし、同一の取引については、価格の決定方法および税務当局への説明は、国際間で共通した内容でなされるべきです。

 

この海外子会社等との取引価格決定に係るグループ全体の方針を、移転価格設定ポリシーと言い、それは移転価格決定の基礎となります。よって、その作成は、グループの中核である親会社が行う必要があります。親会社のマネジメントは移転価格設定ポリシーの重要性と内容を理解して、経理・税務などの管理部門だけでなくて、企画・営業・購買・知的財産などの部門や関連法人等まで情報共有が図られるようにしなければなりません。

 

繰り返しになりますが、トップマネジメントが移転価格税制の重要性を正しく認識して、社内の全部門、及び、国内外の全グループ会社をリードしていくことは、移転価格税制に対応するためには不可欠の事項です。

 

以上

 

【初掲載】

企業情報サイト 「イノベーションズアイ」 コラム 「中小企業にも求められる移転価格税制対応」 第3回 (2016年12月16日)

(弊社関連会社 朝日税理士法人執筆)

 

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