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移転価格税制の基礎 (6) 移転価格文書化(ローカルファイル)の記載内容は?

平成28年10月のことになりますが、国税庁が「国際戦略トータルプラン」を公表しました。これは、国際課税の取組の現状と今後の方向を取りまとめたもので、同庁が国際課税への取組みを重要な課題と位置付けていることがうかがえます。トータルプランの主な内容は、情報リソースの充実、調査マンパワーの充実、及び、グローバルネットワークの強化です。このような国税庁の取組みを考えれば、海外取引を行う企業においては、移転価格文書化などのコンプライアンス遵守の必要性が高まっていると言えるでしょう。

 

今回は、海外子会社等との国外関連取引を行った企業に作成が義務付けられているローカルファイルの記載内容について見て行きます。

 

◆ローカルファイルとは?

ローカルファイルの税法上の正式名称は、「独立企業間価格算定に必要と認められる書類」です。内容は、「海外子会社との取引の内容を記載した書類」と、「海外子会社との取引に係る独立企業間価格を算定するための書類」とに大きく分けられます。

 

◆海外子会社との取引内容を記載した書類

  1. 海外子会社との取引に係る資産及び役務の内容
  2. 海外子会社との取引に係る法人及び国外関連者の機能及びリスク
  3. 海外子会社との取引において、法人又は国外関連者が使用した無形資産
  4. 国外関連取引に係る契約書等
  5. 国外関連取引における取引価格の設定、事前確認等の状況
  6. 国外関連取引に係る損益の切出し
  7. 国外関連取引に係る市場の状況
  8. 法人、及び、国外関連者の事業内容、事業方針及び組織の系統
  9. 国外関連取引と密接に関連する他の取引

 

◆海外子会社との取引に係る独立企業間価格を算定するための書類

  1. 選定した独立企業間価格の算定方法及び選定理由
  2. 国外関連取引に係る比較対象取引の選定
  3. 利益分割法を用いた場合の計算
  4. 複数取引を一の取引とした場合の合理性
  5. 比較対象取引等についての差異の調整

 

上記にあげた書類に関しては、平成28年6月に国税庁より例示集が公表されています。そこでは、各書類の説明と必要な情報の例、準備する書類などが掲載されていますので、参考にして下さい。

 

◆適用時期と提出期限

ローカルファイルは、平成29年4月1日以後に開始する事業年度より作成が義務付けられます。また、海外子会社等との前期の取引金額(受払合計)が50億円以上(ロイヤルティなど無形資産取引の場合は3億円以上)の場合には、確定申告書の提出期限までに作成(これを同時文書化といいます)しなければなりません。さらに、税務調査において提示または提出を求められた場合、税法で定める一定の期日までに提示または提出がない場合は、『推定課税』及び『同業者調査』の対象となりますので注意が必要です。

 

以上

 

【初掲載】

企業情報ウェブサイト 「イノベーションズアイ」 コラム 「中堅企業にも求められる移転価格税制対応」シリーズ第12回 2017年6月16日

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移転価格税制の基礎 (3) ~ 移転価格税制の基本的しくみ(日本の税制)

平成28年度税制改正では、OECD(経済協力開発機構)の「BEPSプロジェクト」の勧告を踏まえ、移転価格文書化制度が再整備されました。貴社が海外の関連企業(国外関連者)と取引を行う場合には、本年4月1日以後に開始する事業年度分の税務申告について、この新しい制度が適用になりますので、アクションが必要です。今回は、そもそも移転価格税制の基本的しくみはどうなっているのか、ご説明いたします。

 

  • <移転価格税制とは>

移転価格税制は、国外関連者との間の取引を通じた所得の不公正な海外移転を防止するため設けられた制度です。国内の企業が国外関連者との取引(国外関連取引)を行った結果、独立した企業間で通常設定される取引価格(独立企業間価格)で行ったときと比べて利益が減少する場合に、その取引を独立企業間価格で行われたものとみなして所得を計算し、課税する制度をいいます。

 

利益が減少する場合の例としては、日本の企業が海外子会社に販売する製品を、関連のない独立した企業への販売価格よりも低価格で販売する場合があげられます。

 

  • <適用対象者と国外関連者>

移転価格税制の適用の対象となるのは、国内の企業(法人)のみで、個人には適用されません。また国外関連者とは、外国企業のうち、その企業と「特殊の関係」を有するものをいいます。例えば、発行済み株式等の50%以上を介する親子関係や兄弟姉妹関係他、実質支配関係にある場合も含まれます。

 

  • <適用対象となる取引は?>

適用対象となる取引としては、国内企業が国外関連者との間で行う、①資産の販売、②資産の購入、③役務の提供、④その他の取引があげられます。また第三者を介在させていても、実質的に国外関連者と行われる金銭の貸付、保険、信用の保証といった役務提供取引等はこれに含まれるので注意が必要です。

 

なお対価性の無い取引は移転価格税制の適用対象となりませんが、その取引が寄付金に該当する場合は、「国外関連者に対する寄付金」として扱われ、その金額の「全額」が損金(税務上の費用)となりませんので、要注意です。

 

  • <独立企業間価格とは?>

独立企業間価格とは、資産の販売・購入、役務提供といった国外関連取引の内容や、国外関連取引を行う者が果たす機能、その他の事情を考慮して、最も適切な方法により算定した価格をいいます。

 

具体的には、独立価格比準法(CUP法)、再販売価格基準法(RP法)、原価基準法(CP法)のほか、複数の価格算定方法があります。

 

  • <移転価格文書の作成義務>

企業が、国外関連者との間で国外関連取引を行った場合には、独立企業間価格を算定するために必要と認められる書類(これを「ローカルファイル」といいます)を確定申告書の提出期限までに作成または取得し、保存しなければなりません。これは、「同時文書化義務」と呼ばれています。

 

なお、前期の取引金額が50億円未満であり、かつ、無形資産取引金額が3億円未満である場合には、この同時文書化義務は免除されています。ただし、同時に作成・保存する義務はなくても、税務調査で税務調査官が提出を求めた日から60日以内の指定日までにローカルファイル提出しなかった場合には、調査官は推定課税(類似の取引を行う第三者から入手した情報等に基づき行う課税)を行うことができます。このような推定課税を避けるためには、移転価格文書を作成・保存しておく必要があるのです。

 

なお、平成28年度税制改正では、新たにマスターファイルと国別報告書の作成・提供が一定の売上げ規模の多国籍企業グループに義務付けられました。これは別の機会にご説明いたします。

 

以上

 

【初掲載】

企業情報ウェブサイト 「イノベーションズアイ」 コラム 「中堅企業にも求められる移転価格税制対応」シリーズ」第9回 2017年4月20日

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移転価格税制の基礎(2)知っておきたい移転価格税制(日本の税制)

我々の周りを見てみると、複数国にまたがって、世界的なレベルで事業を展開するいわゆる「多国籍企業」が少なくありません。多国籍企業においては、親子会社間、兄弟会社間における取引がなされていますが、これら親会社と子会社等(国外関連者といいます)との間の財・サービスの取引に付される価格を移転価格と言います。

移転価格税制の必要性

税制は国家によって決められており、税率は国ごとに異なります。仮にある企業が税率の異なる二つの国で営業している場合、企業はどのような行動をとるでしょうか?税金をコストだと考える企業であれば、トータルの税金を低く抑えようとする結果、両国間での移転価格を操作して、意識的に税率の低い国に利益を残そうとするかもしれません。

国家の財政は、国の収入である税金によって成立しています。本来であれば「国家にもたらされるべき税金」が、前述の企業行動によって、結果として国外に流出してしまうと、国家の財政は破綻しかねません。このような国外関連者との取引を通じた、所得の不公正な海外移転を防止するために、日本を含めた多くの国では移転価格税制が設けられています。

移転価格税制とは

移転価格税制とは、国内企業が国外関連者との取引を行う結果、独立した企業間で通常設定される取引価格(独立企業間価格)で行う取引より利益が減少する場合に、その取引を独立企業間価格で行われたものとみなして当該企業の所得を計算し、課税する制度を言います。日本では昭和61年に導入され、幾度かの改正を経て、平成28年には日本も加盟する国際機関であるOECD(経済協力開発機構)のBEPSプロジェクトの勧告を踏まえた移転価格文書化制度に関する改正がありました。

BEPSプロジェクトは、国際課税のルールを明確にするためのプロジェクトです。リーマンショック後に、各国の財政状況は悪化し、国民に重い税負担が求められるようになりました。その中で多国籍企業の中には、ローカルな税制の隙間や抜け穴を利用した節税対策を実行して、税負担を軽減しているという問題が次々と発覚しました。同プロジェクトは、このような多国籍企業の租税回避行為を防止することを主な目的としています。

平成27年9月に、このプロジェクトの最終報告が取りまとめられ、G20サミットで報告されました。この最終報告は法的拘束力を持っていないものの、日本をはじめ、OECD加盟国、G20参加国では、順次導入を進めています。

移転価格税制の執行状況に目を向けると、近年、日本を含む各国税務当局、特に、中国、インド、東南アジアの国々などの新興国は、移転価格に係わる税務調査に力を入れ、多額の税金の追徴を行うことも少なくありません。今や、移転価格税制の知識は、グローバルに事業を展開する企業にとって欠かせないものと言っても過言ではないでしょう。

― 以上 -

 

【初掲載】

企業情報ウェブサイト 「イノベーションズアイ」 コラム 「中堅企業にも求められる移転価格税制対応」シリーズ」第8回 2017年4月7日

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移転価格税制の基礎(1)はじめに(日本の税制)

世界の名だたる要人の租税回避行為をあからさまにした「パナマ文書」が、2016年4月に波紋を呼び、これに関して、「BEPS」という言葉が脚光をあびることになりました。  

 

BEPSとは

BEPSとは、Base Erosion and Profit Shifting の略(日本語訳は「税源浸食と利益移転」)で、多国籍企業等が各国の税制の違いや租税条約等を利用して所得を軽課税国・無税国に移転し、グローバルに租税負担を免れていることを言います。このBEPSに対応するために、OECD(経済協力開発機構)とG20は、「BEPSプロジェクト」と銘打って、パナマ文書発覚以前の2012年より、15項目の「行動」に関する加盟国への勧告を行っています。

 

BEPS行動13を受けた平成28年税制改正

15項目のうち移転価格に関する「行動」は3項目。そのうち行動13「移転価格関連文書化の再検討」(現在では、「多国籍企業の企業情報の文書化」と改名)に関し、OECD/G20は、多国籍企業がグループ全体の財務情報や事業情報等を、「国別報告書(日本の税制では、「国別報告事項」)」、「マスターファイル」、「ローカルファイル」と呼ばれる共通様式に従って各税務当局に提供することを加盟各国に要請しました。

 

これを受けて、日本では、平成28年度税制改正において、上記3つの文書が導入、または、整備されました。各国においても同様の税制改正が行われています。これら3つの文書から、各国の税務当局はグローバルな移転価格関連情報を広範に取得することが可能になります。

 

かつては、移転価格調査と言えば、主に大規模な上場企業に対して行われ、新聞紙上を賑わして来ました。しかし、近年では、調査対象は中堅企業にも及んでいます。今後は大規模な多国籍企業のみならず、グローバルにビジネスを展開する中堅企業も、移転価格文書化を含めた税務コンプライアンスを遵守し、移転価格調査に備えることが、重要な課題と言えるでしょう。

 

移転価格税制に係る経営リスクの回避

そこで、これから9回にわたって、移転価格税制の基礎を解説いたします。移転価格の算定方法、「比較対象取引」の意味、税務当局の調査の執行状況、平成28年度税制改正で再整備された同時文書化義務等のコンプライアンス制度についてご理解いただき、経営リスクの1つである移転価格税制に係わるリスクを回避していただきたいと思います。

 

以上

 

【初掲載】

企業情報ウェブサイト 「イノベーションズアイ」 コラム 「中堅企業にも求められる移転価格税制対応」シリーズ」第7回 2017年3月24日

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